第五話 「3位vs4位」

時は遡り昼飯時間中。


「君は…転校生?」


金髪ショートヘアの女子生徒が俺に話しかける。

教室内の注目はこの状況に集まっており、廊下にも他クラスが生徒の人集りが出来ていた。どうやらというだけではなく、この女子生徒自身が非常に人気という事らしい。

それもそのはずで、この生徒は『白石潮満』。高校生ながら日本総合個人ランキング4位という実力の持ち主だ。

静恵先生と同じで四天王入りしている白石は学園内だけでなく日本全国でも非常に人気である。


「はい。今日から転校してきた上野四音です。白石潮満さんですか?」


「同級生なんだからそんな畏まらなくていいよ。白石って呼んで、私も上野君で良いかな?」


「わかったよ、よろしくな白石。」


そんな感じで簡単に自己紹介をすると、横から正真が


「そういや夏芽なつめはどうした?、あいつの目から逃れるなんて珍しいな」


「あー、今日はいつ来るか言ってないからね。夏芽も流石にずっと能力は使わないでしょ。」


「し~お~み~、おはよー!!」


二人が話していると、後ろの廊下から茶髪の女子生徒が猛ダッシュで飛び込んで、白石にハグしてくる。


「夏芽!?いきなり危ないでしょ!!。離れなさい!」


白石はそれを必死で剥がそうとすると、茶髪の女子生徒は素直に離れてこちらを見てくる。


「なに?上野君と話してる最中だった?ゴメンね。」


と軽い感じで俺に手を合わせてきた。

俺の横で正真が溜息しつつ、俺に紹介をしてくれた。


「相変わらず騒がしい奴だな。四音、こいつは水沢夏芽みずさわなつめだ。俺ら三人は中学時代からの腐れ縁でな、夏芽はこう見えても個人ランキング145位なんだぜ。」


「『こう見えても』って何だ!私は正真正銘で145位だよ!!。(ニヤッ)」


「何んだと!お前次回の順位戦覚えておけよ!!ゼッテー追い抜いてやるからな!!」


二人がヤイヤイ騒いでいると白石が水沢の首根っこを掴んで


「はいはい。私まだ購買でご飯買ってないから早く行くよ!じゃあね上野君。」


そういって水沢を引っ張っていった。

俺はその後ろ姿を見ながら正真に


「それにしてもあのランキング4位の白石がクラスメイト何て凄いな。しかもその担任が3位の静恵先生なんて…」


俺が驚いていると、正真は


「あー、潮満は静恵先生が目的でこの学校入学したようなもんだからな。1年の時も静恵先生の担任だったし、多分静恵先生の意図で同じクラスにしてんじゃね?」


『まあぶっちゃけ静恵先生以外、この学校で潮満に勝てる人にいないしな』と正真が言う。俺はそれに納得しつつ


「でも3位に教わる4位ってなんか変じゃないか?ほぼ実力変わらない気がするが…」


と、新たな違和感を感じた。


「静恵先生は魔力の基礎魔法以外は殆ど使えないけど、その代わりに剣の腕は世界トップクラスだからな。だから『先生の技術を学びたい』ってこの学校に入る人は少なくないぜ。」


正真はそう言った後に、少し浮かない顔で


「それにあんまり大きな声では言えないけど、同じ四天王と言っても対戦成績では結構差があるんだよな。公式戦では潮満の2勝13敗だし、練習試合ではまだ一本も取ってないだよ…」


と小さく呟いていた。


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                ・ 

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「戦闘…開始!!」


日黒先生の合図で、私は左手の魔力弾を十分割にして静恵先生に放つ。

先生は一気に私との間合いを詰めようしがら、自分に放たれた魔力弾を全て木刀で簡単に弾く。


(やっぱり隙が無い…でも!)


先生が走りながら残り最後の1発を弾こうとした瞬間。私はその魔力弾の軌道を真下に変えて、地面から砂煙が舞わせる。


(よし!!)


私は右手に持った木刀を砂煙の中にいる先生目掛けて思いっきり投げ込んだ。

完璧な作戦に思われたが、先生は砂煙の中、自身の木刀で容易く上に弾く。

私との距離が数メートルになり、完全に先生の間合いに入ったその瞬間。

私は一歩少し後ろに下がり、背中に隠した魔力弾を一斉に先生目掛けて発射した。


(完璧なタイミング!!)


完全に入ったと思われたその瞬間、先生は見切ったかの様にピタッと一旦止まる。

魔力弾はお互いにぶつかり合い、小さな爆発を起こす。


(これでもダメなのか…なら)


私は爆発の最中、上に弾かれた木刀をジャンプしながらキャッチし、そのまま先生に振りかざす。

完全に死角から振りかざした木刀は、先生に入ると思われたが


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次に見えたのは雲一つない綺麗な青空だった。


「そこまでっ!勝者静恵先生!!」


日黒先生の判定の声。私は自身の敗北を理解し少し涙ぐむ。

その状況に周囲の生徒達は惜しみない拍手を贈る。


「良い勝負だった。背中からの魔力弾は正直焦ったぞ。素晴らしい魔力コントロールだ」


先生がそう言い、白石に手を差し出す。


「どんなに焦らせても、負けたら意味がないですよ…」


白石はそう言い、俯きながら先生の手を掴む。


「確かに本番なら結果が全てだ。本番で負けた者が『内容は良かった』と言い訳してもただの愚か者だろう。しかしこれはだ、練習で『結果が全てだから良い試合しても意味がない』と思うのは、それこそ愚か者の考えだと思わないかい?」


先生はそう言いながら白石の頭を軽く撫でる。

白石は俯きながら自身の砂を払い、生徒の中に戻っていく。


「じゃあ次!!どんどん始めていこう。」


静恵先生がそう言うと、ペアを組んだ生徒たちが前に出て対決していく。

その対戦を見ながら残った俺は、周りを見渡しながら対戦相手を探していると。


「上野君まだ相手決まってないのかな?僕も空いてるから良ければ対戦しないかい?」


そう言いながら黒髪の男子生徒が俺に対戦を申し込んできたのであった。






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