第二話 「転校生 【中編】」

全校朝礼が終わり、俺は青山先生と校長室に来ていた。


「そこの長椅子に腰かけてくれ、今お茶を出そう。『日黒君』」


青山先生は長身の男性に指示をして、自分の執務スペースに座る。

俺は先生を横目に長椅子に腰かけると、先生はニヤニヤしながら


「やっぱり、急に全校生徒の前での紹介はやりすぎだったね」


・・・


(この先生、やっぱワザトかよ…)


おかしいと思ったんだ。朝礼開始前から明らかに生徒だけでなく、先生達までザワついていた。


「お聞きしますが青山先生、全校朝礼っていつぶりですか?」


「『静恵先生』。生徒も先生もみんなそう呼んでる。何なら『しずちゃん』でもいいぞ!!」


先生は笑みを浮かべながら言う。


「そうですか『静恵先生』。っでいつぶり何ですか?」


俺は先生をジロりと睨む。


「わ、私がこの学校の校長になったのが10年前だから…それぶりかな?」


「はあ!?、校長に就任してから初めての全校朝礼ですか!?」


俺は驚愕で静止する。静恵先生は苦笑しなら、長身の男性が淹れたお茶を啜る


(10年以上、全校朝礼をしたことないって…)


俺はため息を吐きつつ、出されたお茶を一口含んだ後に


「無駄に注目されて居心地悪かったです。」


と不満をぶつけた。


「確かに(笑)だが君なら充分に期待に応えられるさ。」


・・・


何でそんなに評価が高いんだ…

自信に満ちている先生に対して、俺は不安でしかない。


「それよりも、静恵先生ってクラス担任ですよね。もう1限目始まってますけど大丈夫ですか?」


この話を続けると自分に分が悪いと思った俺は、話を変えて早く終わらせようとするが


「大丈夫だ。午前は自習がメインだし、副担任の日黒君がいるからな。」


静恵先生はお茶を淹れ終わりドアの横で立っている男性に目を向ける。


(そっか、日黒先生の能力スキルは分身か。)


日黒麻偽ひぐろあさぎ。30歳で高身長ハンサムって感じの男性。

8年前から静恵先生の付き人をしているらしく、日本総合個人ランキングは11位、能力スキルは【分身】、【巻き戻しロールバック】と言われている。こちらも静恵先生同様に有名人で、本人達は否定しているが「付き合っているのでは」と世間では噂されている。

因みに日黒先生が否定してるのは「静恵様は崇める対象であって付き合うなど恐れ多いです」という理由である


(多分この人、今も分身体を教室に置いて本体はこっちなんだろうな…。)


「ん、どうかしたか?」


「いえいえ別に。」


日黒先生をジト目で見ていたらバレたので、俺はそっと視線を静恵先生の方へ逸らす。


「話を戻すが、少なくとも私は君に期待しているし、現状の君の置かれている状況も理解しているつもりだ。とりあえず君は私が運営している寮に住んで、学費を含めた生活費は私が負担しよう。」


「本当にいいんですか?こんなにお世話になっちゃって。バイトとかした方が…」


「大丈夫!!。あんまり大きい声で言えないが、私は結構収入はあるんだぞ。高校生一人養う程度なら痛くも痒くもない。」


静恵先生は「エッヘン」と胸を張る。本当に『美』という漢字がピッタリなスタイルをしている。


「でも流石に…」


「そんなに申し訳ないと思うなら私の家で一緒に住むか?そうすれば多少安く済むし、家事を手伝ってくれるなら結構な恩返しになるぞ!!」


・・・


何だろう静恵先生とは逆方向から強烈な殺気を感じる


「すみません…。一人暮らしさせてください...」


それからは少し空気が重かった気がする。




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