第29話クールな幼馴染さん⑩

 今日も隣で。


 「今日はこれだ」

 そう言いながら、幼馴染さんは机に謎の機械を置いた。

 正方形の形をした、箱のようなもの。

 横にはいろんなスイッチや、蓋のようなものをついていた。

 なにこれ?

 「形も随分と変わったから、覚えてないのも無理ないだろう」

 ぽん。と、機械を叩く幼馴染さん。

 「これは、ユキツクゾウだ」

 これが!!

 昔とは随分と形が変わっていた。

 前のはもっと丸い長方形だったよね。

 「そう。たまたま部屋の掃除してたら出てきたんだ。それで、少し改良したんだ」

 確かに、前あった回す取っ手がなくなって、代わりにボタンが追加されている。

 「ちょっと、使ってみるか」

 え?ここで?

 「ああ、せっかく直したんだ。使わないともったいないだろ」

 外でしないとやばくない?

 幼馴染さんの様子が変だった。

 「なに、言っている?ここでやるから、意味があるのだろう」

 幼馴染さんの目の下にクマがあった。

 昨日ちゃんと寝た?

 「ああ、ちゃんと1時間ぐらい」

 あ、寝てなくて感覚バクッてる。

 ちょ、ちょっと。

 僕が止めようとしても、もう遅かった。

 「前回は、大量の水を入れて少量の雪を作っていたが今回は違う。そんなことはしない。ここに大さじ1ぐらいの水を入れると、なんとだね・・・・・」

 そのまま幼馴染さんは永遠と装置の説明をし始めた。

 その目は完全にきまっていた。

 いつもは鋭い目も今日は完璧の開いていた。

 説明を端的に言い換えると、少量の水を起爆剤として周りの水分を吸収し、そのまま急速冷凍しそのまま外に放出する。出る瞬間一瞬温かい風を当て固くなりすぎないようにするらしい。

 少し音をたてながら、勢いよく雪をはき出す。

 「おお、いい感じじゃないか」

 教室内に、どんどん真っ白な雪が積もっていく。

 これはヤバイよ。

 眼の前に起きている、光景に僕は頭を抱えることしかできないでいた。

 ものの数分で教室は雪で埋もれてしまった。

 これ、大丈夫なの?

 幼馴染さんに尋ねると。

 「ああ。教室にあった道具類は全て準備室に移動済みだ」

 変なとこで、用意周到な幼馴染さん。

 「それより。そら」

 幼馴染さんは足元の雪をすくい、僕に投げた。

 その雪玉は、僕の顔に直撃した。

 や、やったな。えい。

 僕もすぐに応戦した。

 その雪玉は幼馴染さんの顔に当たった。

 「ふふっ。私とやるきかい?」

 僕らは、激しい雪合戦を始めた。

 二人だけの雪で。

 二人だけで。

 思いっきり雪玉を、投げあった。

 現状の重大性を、忘れるほどに。

 遊んでいると、足音がこちらに近づいてきた。

 「お前ら、うるさ・・・いぞ・・・・」

 真下は保健室だった。

 きっと、苦情があって幼馴染さんの担任の先生が苦情を言いに来たが。

 目の前の状況に、言葉を失っていた。

 「あ、先生」

 幼馴染さんは至って冷静だったが、僕が冷や汗をかき両手に持った雪玉を落とした。

 「お、お、お前らぁ。なにやってんだだだだぁ」


 僕らはあの後、生徒指導室に呼ばれ。

 幼馴染さんの担任と生徒指導の先生、それと教頭先生に最終下校時間ギリギリまで怒られた。

 処分として反省文と部、活活動無期限の中止、1ヶ月部活時間校内清掃の罰を受けた。


 「あんなに怒らなくてもいいんじゃないかな」

 僕は、夕日を背に帰路についた。

 幼馴染さんは不満そうに呟いた。

 僕はむしろ、あれだけですんでよかったよ。

 雪は僕らが、怒られている間に手の空いている先生と生徒会の人たちで外に運ばれていた。

 その際、隠していたドリッパーセットも見つかり持って帰るように言われた。

 「ちゃんと、掃除まで考えてたというのにな」

 それに、ユキツクゾウは没収となった。

 きっとそれも、幼馴染さんが不満の一つだろう。

 「まあ、あの教室に拘っていたわけじゃないからな」

 そうだね。それに掃除も放課後だけだし。

 そう、休日に集まってまた話すことぐらいはできる。

 「掃除も君と二人で退屈しないだろう」

 そうだね。

 僕は笑う。

 「説教のお陰で眠気も飛んだし。掃除ロボットでも創ってみようか」

 いや、寝てください。

 食い気味にいった。

 幼馴染さんは少し笑って。

 「わかったよ。今日は君に迷惑をかけたし、言うことは聞いておこう」

 そうして。


 「じゃあ、私はここで」

 と、話しているとあっという間に分かれ道についた。

 「じゃあ、またな」

 幼馴染さんは軽く手を振った。


おまけ

よし。そのままキープしておいてくれ。

なに?重い?

おっと、それは女性に対して使う言葉かな?

それに君が言ったのだろう?

肩をかそうか?と、それなのに酷くないかな?

まあ、もうじきだから。待て。

よし。もう下ろしてくれ。

肩車お疲れ様。

ふふ。

最近私じゃなくて、あのコをおぶってたからな。

なまってたじゃないかい?

私が乗って鍛えてやろうか?

ふふ、冗談だ。

もうじき完成だ。

楽しみだな。

ああこれで終わりだな。

おっとあまり話している時間はないようだ。

もう時間だ。

では行こうか?

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