第28話かわいい幼馴染ちゃん⑩

 遠くから声が聞こえる。

 「おーきーーろーー」

 その声と同時にお腹に衝撃が来た。

 「起きた?」

 衝撃の正体は幼馴染ちゃんだった。

 う、うん、おはよ。

 「おはよ」

 幼馴染ちゃんは、満面の笑みで抱きついてきた。

 幼馴染ちゃんと付き合い始めて、1週間近く経っていた。

 関係から言えば、そんなに変わっていないがスキンシップが増えた。

 一緒に出かければ、何かと言って手を繋ぎたがり。家のソファーに座っていれば寄りかかってきたり。

 今見たいの抱きついてきたり。

 明らかにスキンシップが増えた。

 別に嫌というわけではない。むしろ嬉しいのだが、どこか恥ずかしくもある。

 「よし、朝のキミ成分吸収完了であります」

 ピシッと敬礼すると、幼馴染ちゃんは離れて。

 「顔洗ってきてね。リビングで待ってるから」

 ニコッと笑って、幼馴染ちゃんはリビングに行った。

 俺は深くため息をつき、うるさい心臓を黙らせるのに努める。

 全然なれない。

 抱きついたりするのは全然嫌じゃないのだが、身体が持たない少し自粛してほしい、とも思う。

 顔を洗いリビングに行くと、美味しそうな香りが充満していた。

 「今日は昨日の余りのカレーをドリアにしてみたよ」

 チーズがカリッときつね色をしている、ドリアがテーブルに運ばれた。

 「朝から重いかもだけど大丈夫?」

 うん。全然大丈夫。

 少し焦げたチーズとカレーの匂いが食欲をそそる。

 「「いただきます」」

 スプーンを持ち、ひとくち食べた。

 カレーの香りが口に広がると、追ってくるように少しチーズの香りもする。

 ピリッとした、カレーらしい辛さをマイルドにするかのようなチーズ。

 合わないはずがなく、食べ進める。

 「がっつき過ぎ。詰まらないようにね」

 笑う幼馴染は、少し心配そうだ。

 食べ進めている途中、変化に気がついた。

 中にもチーズが入っていたのだ。

 チーズ。

 思わず口を開いていた。

 「気づいた?夢中だったから気づかないと思ったよ」

 中のチーズはとろり溶けていて伸びがあった。

 外側のチーズとはまた違う。

 「美味しい?」

 うん。

 「よかった」

 幼馴染ちゃんは安心したように笑った。

 俺は雑談しながら、朝食を食べ終わった。


 「ありがとう手伝ってくれて」

 俺たちは、並んで食器を洗っていた。

 いいよ。これぐらい。

 幼馴染ちゃんが洗い、俺がタオルで水気を拭き取る。

 「学校でさ、みんな付き合ってたと思ってたみたいだね」

 ああ。

 手を繋いで登校していたので、もちろんすぐにバレた。

 正直恥ずかしかったのだが、幼馴染ちゃんが嬉しそうなので良しとしている。

 教室につくなり、俺たちは取り囲まれた。

 そして洗いざらい吐かさた。

 幼馴染ちゃんは恥ずかしそうに、それでいて幸せそうに話をするもんだから、みんな祝ってくれた。

 まあ、男子たちは「俺たちのアイドルをよくも」と、恨めしい目を向けてきたのはここだけの話。

 「正直、不安だったんだ」

 なにが?

 「だってさ、今までは幼馴染だったのにいきなり付き合ってるんだよ。それに喧嘩してのにさ」

 幼馴染ちゃんは目線を落とす。

 まあ、それをだしにした。と、思われてたな。でも、他人なんて関係ないだろ。

 そう。俺たちが納得して、満足そているなら。

 他人に、どうこう言われることじゃない。

 「なんか、くさいセリフだね」

 幼馴染ちゃんは薄く笑う。

 そう言われると、恥ずかしなる。

 「まあ、そうだね。関係ないもんね」

 幼馴染ちゃんは、こちらに体を向ける。

 「“大好きだよ”」

 幼馴染ちゃんは、手を伸ばし俺のほっぺたを触る。

 つ、つめた。

 幼馴染ちゃんの手は、食器洗いですっかり冷たくなってた。

 「ほれ、うりうり」

 幼馴染ちゃんは、楽しそうに笑いながら触ってくる。

 やったな。

 やり返そうとすると、ひょろっと避けて。

 「きゃあ~。襲われる」

 笑いながら逃げていく。

 ほんと、俺の幼馴染は世界一かわいい。


 おまけ

 忘れ物ない?

 ほんとかな?

 え?私。これも持ったしこれもあるし。

 大丈夫であります。

 ふふ。

 じゃあ、行こうか。はい。

 ?

 何じゃなないよ!!はい。

 手、手だよ。繋ご?

 よしよし。始めから大人しく繋いでよ。

 じゃあ。行こうか

 「いってきます!!!」

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