第25話かわいい幼馴染ちゃん⑨

 これからの俺たちは。


 俺は幼馴染ちゃんに告白した。

 正直ふられると思っていたので、現状に驚きを隠せないでいた。

 今俺は前から幼馴染ちゃんを抱えていた。

 あの~、そろそろ解放してくれません?

 かれこれ1時間近く経とうしていた。

 「やだやだ。離れないから、やっと付き合ったんだから」

 幼馴染ちゃんは頭を、俺の胸板にグリグリと押し付ける。

 明日、恥ずかしくなっても知らんぞ。

 俺はやれやれと頭を撫でてやる。

 「大丈夫、そんなことないから。それよりもっと撫でろ。うりうり」

 幼馴染ちゃんは楽しそうに笑いながら、さらに頭を押し当てる。

 はいはい。

 幼馴染ちゃんの、キャラが崩れ始めているのはさておき、久しぶりにちゃんと話せるのが楽しかった。


 結局の所、俺のカン違いで始めたことだった。

 しっかり幼馴染ちゃんの話を聞かなかった俺が、全面的に悪い。

 だが、結果論で言えば昔より関係は進歩したと言えるだろう。

 幼馴染から恋人に。

 もとには戻れなかったが、これでいいと思う。

 進んで、止まって、ふりかえって。

 そんなふうに、二人で歩めたらいいなと。

 俺は思う。


 幼馴染ちゃんは俺の胸の中で寝てしまった。

 目元は赤く腫れて、鼻も少し赤くて。

 でも、気持ちよさそうな寝顔を見ると、嬉しくなる。

 俺は、幼馴染ちゃんをおんぶして隣の幼馴染ちゃんの家のインターホンを押した。

 『は~い』

 おばさんの声がした。

 あの、寝ちゃったので送りに来たんですけど。

 カメラに幼馴染ちゃんを見せた。

 『あ~あ。じゃあ今日はそっちに泊めて』

 え?

 思わずすっきょんとうな声が出た。

 え?ここ開けてくれたら。俺運びますよ?

 『そうじゃな、なくてさ。その顔見たらうまくいったんだろ?なら、据え膳食わぬは男の恥と言うもんだ』

 それで親としていいんですか?

 思わず声を張ってしまう。

 『まあそう言うことだから。あ、ちゃんとゴーー』

 俺は、インターホンを切った。

 まさか、そんなことを言われるなんて予想もしなかった。

 あの人はあれでいいのか?

 俺は自分の家に戻り、俺のベットに幼馴染ちゃんを寝かせる。

 気持ちよさそうに寝る、幼馴染ちゃんを見て、ドキドキ心臓がなる。

 幼馴染ちゃんの頬に手を当てると、確かに温かくてそれにすりすりとすり寄ってくる。

 幼馴染ちゃんの甘い匂いがいつも以上に鮮明だ。

 いいのか?こんなんで。

 心臓はうるさく、頭は真っ白になる。

 欲望を幼馴染ちゃんに・・・・・。

 「う~~ん。あ、ありがとう。」

 幼馴染ちゃんは寝言でそんなこと言った。

 その瞬間、邪な気持ちはどこかにとんでいっていた。

 その日は幼馴染ちゃんを俺のベットで寝かせ、俺はソファーで寝た。

 別に日和ったわけじゃない。決して。


 私が、目を覚ますると幼馴染君のベットの上だった。

 「え?え?なんで」

 一瞬、思い出すのに時間がかかったが、思い出した瞬間顔から火が出た。

 「ちょっと待って、ちょっと待って。ヤバイヤバイ」

 布団で顔まで覆う。

 付き合えたことよりも、それで脳がやられた自分の行動のほうがヤバい。

 「恥ずかし過ぎる」

 とても冷静でいられるとは思えなかったので、水を飲みにリビングに向かった。

 それより幼馴染君はどこで寝てるんだろう?

 そんなのすぐにわかるはずなのに、その時の私は分からなかった。

 リビングに行くと、ソファーで寝てる幼馴染君を見て。

 「なァァァー」

 声にならない声が出た。

 顔を見ると恥ずかしい記憶が蘇り、悶える。

 「くっっっ」

 それでも、幼馴染君の顔を見たくなるのは、きっとそういう星の下に産まれたからだろう。

 悶えながらも、幼馴染君の顔を見る。少し寝苦しそうにしているのが、すごくかわいい。

 「はぁぁぁ。好き好き好き」

 きっと、私は幼馴染君依存症だ。

 幼馴染君と少しでも一緒にいたい。

 でも、今日からは幼馴染じゃなくて恋人として隣を歩けるのが嬉しくて、顔がニヤけてしまう。

 私は幼馴染君の頭を撫でて。

 頬にキスをした。

 「次は起きてるときにね」

 私は、扇風機を直接当たらないようにして掛け布団を掛けて、もう一度寝る。

 明日からは、恋人に朝ごはんを作る初めての日だから。



 コンコンコン。

 遠くから規則的な音がして目が覚めた。

 そこにはエプロンを着けた幼馴染ちゃんが朝ごはんを作っていた。

 久しぶりの光景、部屋の中に漂う美味しそうないい匂い。

 おはよ。

 俺が声をかけると、幼馴染ちゃんが俺に気づいて笑顔で。

 「おはよう、朝ごはんもうできるから待っててね」



おまけ

 どうやら娘に彼氏ができたらしい。

 しかも、親友たちの子ども。

 嬉しいのか、よくわからない感情が心を埋め尽くした。

 インターホンのやり取りを終わらせ、ソファーに座る。

 きっと今頃、娘は大人の階段を早足で登ってるんだろうな。

 煽ったのは私だが。

 小さい頃のあの娘を思い出すと、同仕様もなく寂しくなる。

 私達の手から離れていくあの娘を。

 背中を遠くから見つめる、私達。

 子供というのは、なんとも自分勝手だ。

 私達の後ろにいたと思ったら、いつの間にか隣で手をつないでいて。

 そして、一歩先で後ろ歩きに私達のことを見ていると思いきや、いきなり隣に大事な人と歩き。

 振り返ることはなくなる。

 「そんなん、ズルイじゃん」

 気づけば、頬に涙が流れていた。

 「もっと、一緒にさ」

 なんてことはあの娘に言えない。

 言えるわけない。

 そんなことしたらいけない。

 「母ちゃんこんな気持ちだったのかな」

 自分の母に思いを馳せていると。

 「ただいま」

 夫が帰ってきた。

 「あ~あ、腹減った。とっと、どうしたん?」

 私は夫の胸に飛び込んでいた。

 「うっせい」

 「どうしたの?奥さんは」

 夫は笑いながら頭を撫でてくれた。

 「うっせい」


 次の日の朝。

 あの娘が帰ってきた。

 「いってきます」

 制服を着にきただけみたいだ。

 「おう、行って来い」

 娘の染めている髪を触り言った。

 「なに?行ってくるね」

 もう、振り返らないだろう。

 でも、いつまでも見てるから。

 それが親ちゅうもんだ。

 「ほらお前も行け」

 「昨日と扱い違くない?」

 

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