第21話妹幼馴染⑦

俺は後悔を胸に刻む。

 それはどんどん大きく、強くなっていく。


 「君でしょ。あの娘を救けてくれたの」

 おばさんにそれを聞いて俺すぐにわかった。

 はい。

 消えそうな声で俺は言う。

 「やっぱね。先生は教えてくれなかったけどそんな気がしてたの」

 おばさんは、ふふっと笑う。

 あの。

 上手く言葉がまとまらない、何を言えばいいのか分からなかった。

 幼馴染のことは心配だが、果たして俺ができることがあるのか。

 俺が今踏み込んで、おばさんや幼馴染のこと傷つけることにならないか。

 そんなこと思ってると、おばさんが口を開いた。

 「なにも・・・。何も、言ってくれなかった」

 震えた声で、でも涙は見せない。

 「だから、ほんとにありがとう。君は私達にとってヒーローで、あの娘にとってはきっとお兄ちゃん」

 ・・・・。

 「私たちじゃ、駄目みたいだから。あの娘の話を聞いてあげて」

 俺は目を見開く。

 何もできなかった俺が。

 悲観的になる。

 ヒーロー?お兄ちゃん?

 何言ってる。

 俺は、あの場にいてただ丸くなることしかできなかった。

 自分も事ばっかで、保身のことしか考えれなかった。

 そんな俺にできること。

 幼馴染の話を聞く。聞いたからって何かが変わるわけでもない。

 俺が聞いたって、意味がない。

 おばさんやおじさんがやったほうが何倍も意味を成すだろう。

 「嫌ならいいんだ・・・・。ただ」

 おばさんは顔を落とす。

 「もう何日も部屋から出てないんだよ。だから」

 “君ならもしやと、思ったんだがね” 

 そんなの行けるわけがない。

 どんな顔して会えというのだ。

 向こうは知らなくても、こっちは聞いて、助けることができなかったんだ。

 こんな俺に何ができると言うんだ。

 同時に、何もしなくていいのか?

 そんなことも思う。

 また俺はうずくまって。

 幼馴染に何もしてあげれないのか。

 このまま幼馴染と別れていいのか?

 ほんとに後悔しないか。

 そう思うと勝手に足が動いていた。

 少しでも幼馴染の支えになれるなら。

 


 俺は幼馴染の部屋の前に立っていた。

 いつも見ていたはずの扉はどこか暗く感じた。

 す~は。

 俺は深呼吸して。うるさい心臓を黙らせる。

 ノックする手はすごく重くでも、もう引かないと決めたので、踏み出す。

 コンコン。

 返事はなかったが、なんとなくそこに居る気がした。

 あ。えっと。

 来る途中で考えていた言葉が全て、使い物にならないぐらい頭がグチャグチャになった。

 それでもひねり出す言葉。

 ごめん。

 気づいてやれなくて。

 助けてやれなくて。自分が情けない。

 気付いたら涙が頬をつたっていた。

 おばさんから聞いたよ。

 お腹空いてないか?

 多分今俺が言う言葉は、薄ペラくてなんの支えになれないと思うけど。

 俺は、ずっとお前といるって決めたから。

 お前が嫌がっても、お前が笑顔で過ごせる日まで一緒にいるから。

 実際のとこは分からなかった。

 幼馴染が何を考えているか、だから俺は幼馴染のそばにいることにした。

 知ってすぐにできなかったことを。

 幼馴染はその日は顔出さなかった。が、その夜おばさんが用意していたおにぎりを3つ食べたらしい。

 次の日からは俺は毎日幼馴染の家に通ってはドアに向かって話しかける日々が続いた、がそれはすぐに終わった。

 その日は酷く暑い日だった。

 何年ぶりの気温なんて天気予報でいっていて、それも納得のいく暑さ。

 数分外にいるだけで汗を滝のようにかいく。

 一応持ってきていたタオルが役に立つとは思わなかった。

 汗を拭き俺は幼馴染の家に入った。

 あの一件からおばさんは仕事を辞め、いつも家にいた。

 おじさんの仕事も一段落ついて、軌道に乗っていた。

 おばさんに挨拶して、幼馴染の部屋の前に座る。

 開かないドアを前に俺は語りかける。

 いつも反応がないドアの向こう、でも今日は少し違った。

 鍵がかかったドアはドアノブに上が赤くなっているはずなのに、今日はなっておらず青かった。

 鍵かかってない。

 その時、自然とドアノブに手がいっていた。

 が、開ける前に我に返った。

 勝手に入っていいのだろうか?

 嫌な思いをするのではないか。そう思うと開けることができなかった。

 か、鍵開いてるぞ。

 声をかけてもやはり声は帰ってこない。

 でも、中が気になる。

 今幼馴染がちゃんいるのか、気になって、また手をかけていた。

 返事しなかったら入るよ。

 強硬手段だがそうすることにした。

 返事はなかった。ので、ドアを開けると、そこには目を疑いたくなるような光景が広がっていた。

 部屋は真っ暗で、変な臭いもした。

 それに、床には教科書やゲームカセット、漫画などが床が見えなくなるぐらい散らばっていて。

 その上には銀色の髪が散らばっていた。

 俺は息を呑んだ。

 幼馴染の姿はなく、でも布団が不自然に盛りあがっていた。

 俺はものを踏まないようにベット脇まで行きベットに座った。

 いざ入ってみると、何をいえばいいか分からなかった。

 俺が黙っていると、幼馴染が口を開いた。

 「なんで毎日来てくれるの?」

 消えそうなぐらい小さな声で。でも、しっかり聞こえていた。

 なんでって。

 少しためて。

 お前が大事だから。

 正直、最初はまともに関われるか分からなかった。

 俺って馬鹿だし。何が言いたいかもまとまってなかったけど。

 お前の現状を見て、俺は、お前にとってなんだろうって。なにができるんだろう?って。思ったんだ。

 今でもなんでここにいるか分からない。でも、なんとか伝えたいと、幼馴染は独りじゃないと伝えたかった。

 俺は、お前の兄貴みたいなもんだ。

 妹が苦しんでるのに黙ってる兄貴がどこにいるっんだ。

 「なにそれ」

 俺自身もそう思ってる。

 でも、幼馴染の声は更に暗くなる。

 「私は違うよ。髪とか気持ち悪くないの」

 そんなわけ無いだろ。

 俺は食い気味に言う。

 力みすぎて大声になってしまう。

 気持ち悪いなんて思ったことない、むしろ。

 言葉に詰まった。

 「むしろ?」

 き、きれいだと思った。初め見たときおとぎ話の妖精みたいだと思ったよ。

 めちゃくちゃ恥ずかしい。でも、ここで言わなかったらきっと気にしてしまうだろう。

 顔を真っ赤にしながらいった。

 「じゃあ、じゃあさ証明して。私がキモくないって」

 証明。

 顔が見えないため、何を思って言っているのか想像がつかない。が、俺は後ろから抱きしめた。

 何したらいいかわからないけど。これでいいか?

 正直不安だったが、これが一番だと思ったからそうした。

 「・・・・」

 幼馴染は何も言わないかった。

 これじゃなかったよな。

 俺は離れようとしたら。

 「だめ。離れちゃダメ」

 幼馴染の言葉に、驚きながらも俺はハグしつつ頭らしきとこを撫でる。

 幼馴染は心地よさそうに喉を鳴らす。

 「あ、ありがとう」

 そして、幼馴染は小さな寝息をたてた。

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