第17話クールな幼馴染さん⑥

 幼馴染くんは言う。


 幼馴染くんが来なくなって一週間以上経った。

 私が学校に行ってないのもあるかもしれないが、幼馴染くんが会いに来なくなったのだ。

 あの日私は幼馴染くんに、酷いことを言ってしまったことが胸の中を蝕む。

 私は布団に寝転び天井を見つめていた。

 工房にも入ることができずに、暇を弄ぶ。

 学校には行く気になれず、家にひこもる日が続く。

 「いつまでサボるの?」

 母さんがたまにそう部屋まで言いに来る。

 「サボるって。そもそも私は学校に行く必要性を感じないだけさ。あそこで学ぶことはない」

 「まったく。誰に似たんだろうね」

 母さんはため息をつき出ていく。

 そんな日々が続いた。

 おじいちゃんには、なんとなく会いづらくお見舞いには行けていなかった。

 自分も今何がしたいかわからない。

 おじいちゃんと会える、時間も長くはない。話をしたい気持ちはあった。

 でも、どこか気まずさを感じていた。

 「何してるんだ」

 私は呟くが答えなどでない。



 しばらくして、うちに電話が来た。

 今、母さんは仕事に行っていてうちには私しかいなかった。

 「もしもし」

 『あ、ちょうどよかった』

 母さんだった。

 「どうした?仕事中なんじゃ」

 『落ち着いて聞いて。おじいちゃんが・・・・』

 心臓が止まりそうだった。

 冷や汗が頬をつたる。

 心拍数が上がる。

 私は病院に急いだ。

 おじいちゃんの病状が急変した。



 「お嬢ちゃん、走らないでください」

 後ろから看護師さんの声がしたが無視して、おじいちゃんの病室に向かう。

 「お、おじいちゃん」

 私は勢いよくドアを開け病室に入る。

 「おお、よく来たね」

 そこにはいつも通り眼鏡をかけ本を読むおじいちゃんがいた。

 「あれ?」

 私は息を整え、ベットの脇まで行く。

 「病気大丈夫?」

 おじいちゃんは驚いたように、目を見開き。

 おじいちゃんは人工呼吸器もつけていなかった。

 「なんのことかな?わしは元気だ」

 おじいちゃんは、私の頭を撫で言う。

 「そっか良かった」

 私は脇においてあった椅子に座る。心配で出てきてしまい、何も話すことがなく沈黙が広がる。

 「お前さんが最近来てくれなかったから、暇だった。どうかしたのか?」

 口ごもる。

 なんと言えばいいか、わかなかった。

 「薬創れなかった・・・・」

 私は俯き素直に言う。隠すことなく、事実を。

 「ごめん・・・・」

 「そんなもんいらん!!!」

 おじいちゃんの言葉は私が思っていたのと違い、私は顔を上げる。

 「なんで?できればおじいちゃんもっと長く生きれるんだよ?どうして?」

 「なぜってお前さん、それを創ろうとして倒れたそうじゃないか」

 「っ。で、でももう出来るんだ」

 おじいちゃんは優しく頭を撫でる。

 「わしも昔はそうだった。研究に夢中になって」

 「なんのこと?」

 「大事なものの話さ。お前さんはまだ見えてない、こんな老ぼれより大事なモノがあるだろ」

 私は首をふる。

 「私はおじいちゃんに生きてほしい。それ以外はいらない」

 「嬉しいこと言ってくれる。でもそれじゃ駄目だ。わかるだろう、気付いてるはずさ」

 おじいちゃんは再び頭を撫でる。

 「無理なんだよ。わしの病気は治らん。それよりお前さんが笑って。誰より幸せになって欲しい」

 涙が溢れてくる。

 研究をすればするほど、わかる。わかってしまう。この、病気を治すことは出ないと。

 「お前さんに教えたことは、誰より幸せに暮らせるように。笑って暮らせるように」

 おじいちゃんの温もりが、頭を伝って全身に伝わる。

 「わしからのプレゼント。けしてわしと同じ道を歩んじゃいけん。わかったか?」

 おじいちゃんは優しく微笑む。

 「う、うん」

 私は顔を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにして。でも一生懸命笑う。

 おじいちゃんが安心できるように。

 その時は酷い顔をしていたと思う。

 でも、このときちゃんと泣け良かったと心から思う。


 おじいちゃんは次の日息を引き取った。

 その顔は、死んでいるように見えなぐらい安らかに微笑んでいた。


 これはあとから聞いたことだが。

 私が行ったとき、病状が急変したのは事実で人工呼吸器をつけていなかったのはおじいちゃんの要望だったらしい。

 苦しかったろう。自分で息をするのもギリギリの状況だったらし。

 それでも、孫の私に心配をかけないように  無理してそうしたらしい。

 それを聞いたとき私はおじいちゃんらしいと思った。


 葬式はおじいちゃんの希望もあって家族葬で小さく終わらせた。

 おじいちゃんは若い頃に離婚していて、葬式にはその相手が来ていた。

 「まったく、馬鹿な人だよ」

 その女性は涙を浮かべながら呟いてたのが聞こえた。




 そして、全てが終わったあと私は幼馴染くんの家の前にいた。

 「何緊張してるんだ」

 インターホンを押す手が震える。

 もう、一ヶ月近く会っていない。最後が最後、喧嘩別れだったので気まずい。

 「また明日にしようかな」

 「何してるの?」

 私が帰ろうとしたとき、後ろから幼馴染くんの声がした。

 「な、なんで?」

 てっきり幼馴染くんは家の中にいると思い、意表を突かれる。

 「なんでって、ちょっとコンビ二に行ってたんだよ」

 「そ、そうかい」

 私は息を整える。

 うるさいぐらいなる心臓を落ち着かせる。

 「え~っと。なんだ、この間はすまなかった」

 チラッと幼馴染くんの顔を見る。

 「あ~あ、そのことね。もういいよ、僕こそごめん無責任だった」

 予想外な返答に私は目を白黒させる。

 「ならなぜ、うちに来てくれなかっただ?待ってたのに」

 「それは」

 幼馴染くんは恥ずかしそうに。

 「ちょっと、行かないと寂しくてきてくれるかなって。思って」

 くっっっ///。

 「ふふっ。私はまんまと君の策にハマったわけか」

 何だそれ可愛過ぎる。私は顔に出ないように必死に取り繕う。

 「でも、僕も寂しかった」

 ぐっっ。

 まったく私の幼馴染くんは可愛すぎるな。

 「話がしたい、家にあがってもいいかな?」

 私は、再び君の夢を創る。

 私が幸せになるために。


あとがき

どうもあすペンです

おじいちゃんの話は今後どこかで書く予定です

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