第14話クールな幼馴染さん⑤

 幼馴染さんが言うことは。

 



 幼馴染さんと再会もう1年近く経った。

 幼馴染さんはいろんな機械を創っては、見せてくれる日々が続いた。

 そんなある日のこと。

 「やあ、来たよ」

 幼馴染さんが今日も僕の家に来ていた。

 どうしたの?

 「いや、特に用があったとゆうわけではないんだが」

 煮えきらな言い方をする。

 「実は次は少し遅れると思うけどいいかな?」

 何かあったの?

 幼馴染さんがそう言うのは初めてだった。

 「いや別に。何もないさ」

 そ、そう。

 「ああ、私は帰って作業をするから。じゃあね」

 そう言って幼馴染さんは帰っていった。

 どこか焦りを感じたがその時は気にしなかった。


 次の日。

 いつも一緒に登校していて、いつもは幼馴染さんが先にいる待ち合わせの場所に幼馴染さんの姿はなかった。

 僕はギリギリまでそこで待っても幼馴染さんは現れなかった。

 その日の帰り。

 僕は幼馴染さんの家に行った。

 病気なのではと思いお見舞いのつもりだった。

 ピンポーン。

 インターホンを押すと、中から幼馴染さんのお母さんが出てきた。

 なにやら出かける前だったみたいだ。

 「あら、いらしゃい。あの子なら工房の方にいるから」

 あの、どこか行くんですか?

 「ああ、ちょっとおじいちゃんの病院にね」

 そう言って、幼馴染さんのお母さんは家を出ていった。

 僕は幼馴染さんの家に上がり。

 工房に向かう。

 工房とは幼馴染さんのお父さんの仕事場としている場所で。いつも幼馴染さんはそこで夢を創っている。

 工房はもともと倉庫として使われていた場所を幼馴染さんのお父さんが改造した。

 お~い。いる?

 僕は工房の中を覗くと幼馴染さんが何かを創っていた。

 幼馴染さんは集中していて気づかない。

 「くそっ。まただめだ。どうして」

 そう言いながら、ノートになかを書き込む。

 声をかけても気づかれなかったので、しばらく様子を見て、その日は帰ることにした。

 次の日も幼馴染さんは学校に来なかった。

 数日間、家に行くが幼馴染さんと話すことはできずにいた。

 その間いろんな考察が僕の頭の中を埋め尽くす。

 いきなり、どうしたんだろう?

 悩んでもしかなかった。

 幼馴染さんの考えることは、いつも僕が考える何個も先を考えていて。

 僕が今考えつくことはきっと違うのだと思ったからだ。

 その日も幼馴染さんの家に行った。

 インターホンを押そうとしたときだった。工房の方から幼馴染さんのお母さんの声がした。

 「あんた、いい加減やめなさい」

 「うるさいな、母さんには関係ない。放っといてくれ」

 どうやら言い争っているみたいだ。

 僕は急いで声の方に行く。

 だ、大丈夫ですか?

 「ああ、君か」

 幼馴染さんは僕の方を見ると、安心したような顔をした。

 でも、幼馴染さんは息が荒く。顔色も悪い。明らかに体調が悪そうだった。

 「ちょうどいい。君、家で母さんと話しててくれ。母さん、お互い頭を冷やそう」

 そう言うと、幼馴染さんは工房に入り鍵を閉める音がした。

 「ちょ、ちょっと。開けなさい」

 幼馴染さんのお母さんは工房のトビラを叩く。

 僕は状況が飲み込めずにいた。


 僕は幼馴染さんのお母さんから、話を聞くことができた。

 

 「お父さん。いや、おじいちゃんの病状が急変したの」

 ・・・・。

 「もう、長くないって…」

 僕は言葉が出なかった。

 その内容に僕は幼馴染さんの行動の意図が読めた気がした。

 おじいちゃんのために、なにかしているのだと、そう思った。

 そうですか。

 「それであの子、もう何日も寝ないでなにか創っっているみたの」

 

 僕は工房のトビラの前に座っていた。

 ねえ。

 僕は幼馴染さんに声をかける。

 休んだほうがいいよ。

 僕が言うと中から、幼馴染さんの声がした。

 「聞いたろ。もう時間がないんだ。だから急がないと」

 いつもと違い幼馴染さんの声には、余裕はない。

 何創ってるの?

 「何って。そんなの、おじいちゃんを治す薬さ」

 薬?

 「そう。今、おじいちゃんを治す薬は無くてね。私が創るんだ」

 声が震えていた。

 「まだ、おじいちゃんに教えてほしいことはたくさんあるんだ。おじいちゃんは何でも知ってるんだ。私達が想像できない世界を見てきた。すごいだろ」

 ・・・・。

 「だから、死なせない。私が死なせない

 私が救けるんだ。」

 さっきまでの弱々しい声じゃなかった。

 力強い言葉。

 決意の塊だ。

 「だから、し、しばらく学校には、い、行けないんだ」

 だ、大丈夫?

 急に言葉が絶え絶えになる。

 「だ、だい、じょうぶ」

 ガシャン。

 中から何かが倒れる音がした。

 血の気が引く。

 大丈夫?ねえ?

 僕は扉を叩く。

 その音で、家にいた幼馴染さんのお母さんが出てきた。

 「どうした?」

 幼馴染さんが倒れたかもしれないことを伝えると、幼馴染さんのお母さんは目を見開きトビラを叩く。

 「大丈夫?取り敢えず開けなさい」

 幼馴染さんのお母さんも冷静じゃなくなる。

 僕も冷静さを失いかけていた。

 その時、僕は工房の上のついていた小窓を見つけた。

 僕なら入る。

 そう思い、僕は工房を登り始めた。

 工房はレンガ作りになっていて、登りやすかったが。その角は意外に鋭利で手は、血だらけになっていた。

 でも、今は痛みなど感じなかった。

 窓には鍵がかかっており、ガラスを割って中に入る。

 大丈夫?

 中に入ると幼馴染さんが倒れていた。心臓が止まりそうだった。

 おばさん救急車。

 僕は必死に叫んでいた。



 幼馴染さんは寝不足と栄養失調だった。

 今幼馴染さんは点滴をうち寝ていた。

 その日幼馴染さんは入院することになった。



 次の日学校の帰り、僕は幼馴染さんの家にお見舞いに行く。

 今日退院することは、朝幼馴染さんのお母さんから電話があり知っていた。

 僕が家に行くと、幼馴染さんのお母さんが謝った。

 だが、僕は気にしてなかった。それよりも幼馴染さんのことで頭がいっぱいだった。

 僕は幼馴染さんの部屋を開けた。

 「やあ、ノックも無しかい」

 幼馴染さんは寝ながら言う。

 幼馴染さんを見て僕は膝から崩れ落ちる。

 「何だ、大袈裟だな。ただの、寝不足と貧血だよ」

 僕は近づき幼馴染さんの手を握る。

 それでも。それでも心配だったんだ。

 僕は幼馴染さんにうったえる。

 ただの寝不足でも、心配で。今日なんて何も頭に入ってこなかった。

 僕は泣いていた。

 だからもう、無理はしないでよ。

 「・・・・・」

 僕を頼ってよ。なにも、できないかもしれないけど。

 僕たちは、幼馴染じゃん。

 「そうだった。もっと君を頼るべきだった。すまない」

 幼馴染さんは起き上り、僕の頭を撫でる。

 「次からは頼るよ。だから泣かないでくれ」

 幼馴染さんは笑う。

 その笑顔は無理をしているように見えた。

 う、うん。それより大丈夫?

 「何がだい?」

 体調は?

 「ああ、今は少し目眩がするかな?それと頭痛」

 そっか。

 少し安全した。心配で頭がいっぱいだったが良くなってよかった。顔色も良くなっている。

 「実はね工房を出禁になってね。もう創れないんだ。父さんからもすごい怒られたし、散々だった」

 幼馴染さんそう言い目を落とす。

 出禁?

 「情けない」

 苦虫を噛み潰したよう顔する。

 幼馴染さんは布団に倒れ込んだ。

 「ただ、頭が良くなっても無駄だった。大事なときに使えない頭なんて」

 幼馴染さんは腕で目元を隠す。

 「私は無力だ」

 幼馴染さんが苦しんでるのに、僕は何もできないのか?

 自問自答する。

 また一人で抱えさせるのか、と。

 いや、今からは二人で。

 僕と幼馴染さんで。

 助けるんだ。

 僕は幼馴染さんに言う。

 創ろう。

 「っ?」

 幼馴染さんは無力じゃない。

 僕はわかっててるよ。

 保育園児の戯言を形にできる人だ。

 僕の夢を創る人だ。

 たとえ、幼馴染さん自身が自身をなくしても、僕は幼馴染さんに頼むよ。

 一緒創ろう。

 「なにをだい?」

 そんなの決まってるよ。

 おじいちゃんを助けるんだ。

 「無理だよ、そもそも私が創れるものじゃなかったんだ」

 自傷気味に言う。

 「わかるだろう。私は小学生だ」

 弱音を吐く幼馴染さん。

 「何十年も研究してる人もいるんだ。それでもできないんだ」

 そ、それでも。

 僕は食い下がらない。

 「いい加減にしてくれ」

 幼馴染さんは怒鳴る。

 「私は諦めたんだ。わかるだろう」

 ・・・・。

 「それに、君に何ができると言うんだ。口だけだろう」

 っ。

 「君はいつも私を見ているだけじゃないか。それがなんだ、諦めるな、だって。ふざけるんじゃないよ」

 僕は涙を浮かべる。

 「君は役立たずだ。何もできない泣き虫やろうさ」

 図星だった。

 確かに、僕はいつも幼馴染さんの後ろを歩く。役立たずだ。

 ご、ごめん。無責任だった。

 僕は立ち上がり。幼馴染さんの部屋を出た。

 僕は家を出ると我慢していた涙が溢れてきた。



 「何やってるんだろう。」

 幼馴染くんが帰ったあと、私は天井を見つめ呟く。

 「何当たってるんだ」

 私は反省した。

 でも、すでに幼馴染くんは帰ったあとだった。

 「明日も来るよな」

 私はそう呟いた。

 

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