第8話クールな幼馴染さん③

 それはまだ、僕らが幼馴染になる前の話。


 僕が幼馴染さんに初めて会ったのは、保育園の時だった。

 はじめに声をかけたのは僕からだったと思う。

 延長保育で、僕と幼馴染さんだけ残るとこが多かった。

 だから話しかけたんだと思う。

 幼馴染さんはいつも本を読んでいた。

 「なにしてるの?」

 幼馴染さんは無視をした。

 「なによんでる?」

 幼馴染さんは面倒くさそうな顔して、体の向きを変えた。 

 その日は返事を返してもらえなかった。

 でも、僕はくじけなかった。

 次の日、僕は幼馴染さんの隣で絵本を読むことにした。

 でもすぐに飽きてしまった。

 「ねぇ、おはなしようよ」

 その日も返事は返ってこなかった。

 他の子とは違う反応で、僕はそれが楽しくなっていた。

 次の日も次の日僕は幼馴染さんに話しかけた。そんなある日、僕は幼馴染さんの隣でお絵かきをしていた。

 「いつもいつもなに」

 ついに幼馴染さんは口を開いた。

 僕は嬉しくて興奮気味に。

 「だってきになるんだもん」

 「気になる?」

 僕は頷く。

 「だっていつも、ほんをよんでるでしょ?」

 「そうね」

 「なによんでるの?」

 幼馴染さんは若干引いていた。

 「これは、星の王子様、って本」

 幼馴染さんは本を僕に渡す。中を少し見てみる。

 「むずかしくてわかんない」

 そう言うと幼馴染さんは笑った。

 「そうね、あなたには難しかったわね」

 初めて見た幼馴染さんの笑った顔は、僕の頭に強く残った。

 次の日、あいも変わらず幼馴染さんに話しかけていた。

 「今日もホシノおうじさま?」

 「ああ、そうだよ。それとこれ」

 幼馴染さんは僕に本を渡した。

 「なにこれ?ホシノオウジサマ?」

 「そう、それは絵本版。私の家から持ってきたの。それなら、あなたも読めるんじゃない」

 そして僕は、本に夢中になっていた。

 いつもとは違う絵本は僕に刺激を与えた。

 本はすぐに読み終わった。

 「おもしろかった」

 僕は感想を幼馴染さんに言う。

 保育園児の語彙などそこが知れいるが、自分の言葉で幼馴染さんに感想を言う。

 「そう、そんなにハマってくるなんてね」

 幼馴染さんは前とは違い真剣に話を聞いてくれた。

 僕は鼻息を荒くして興奮冷めやまぬまま、もう一度読み直していた。

 この日以来幼馴染さんは毎回新しい絵本を持ってきてくれた。

 僕らの日々は、ただ僕が隣りにいるだけじゃなく、本という新たな絆を手にしていた。

 そんなある日。

 僕は気になっていたことを聞いた。

 「なんでさ、話してくれるようになったの?」

 幼馴染さんは、少し考えて。

 「気まぐれさ、あの日は母さんと喧嘩をしてね、どうしよもなく寂しかったのさ」

 幼馴染さんは遠い目をしていた。

 僕は思わず。

 「っ?急になんだ?」

 幼馴染さんの頭を撫でていた。

 「なんか、かなしそうな顔してから」

 幼馴染さんはハッとして。

 「確かに悲しかったのかな」

 幼馴染さんは少し笑い。

 「君さえ良ければ少しこのままでもいいかな?」

 僕は頷いた。

 幼馴染さんは心地よさそうな顔をしていた。


 そして時は流れて、桜咲く季節。

 幼馴染さんは卒園の日になっていた。

 僕はお母さんに頼んで保育園に来ていた。

 幼馴染さんに会うためだ。

 幼馴染さんを探すのには時間はかからなかった。。

 幼馴染さんは保育園のいつもの場所で読書をしていた。

 「随分と遅い到着だね」

 「うん、ママにお願いしてたから」

 この日に会うことこは約束してなかったが、なんとなく幼馴染さんが待っている気がした。

 幼馴染さんは読書を止め立ち上がり。

 「私は小学校でたくさん勉強をするよ。そして、君の馬鹿げた夢を叶えてあげる」

 幼馴染さんはまっすぐ僕の目を見て宣言する。

 「そして、この気持ちに名をつけてくれ」

 そっと指を僕の方に伸ばす。

 「君がね」

 このときの僕には何を言っているか分からなかったが、僕は頷く。

「そういえば、私の名前を教えてなかったね」

 「確かに」

 幼馴染さんはすでに名札を外していた。

 「私の名は・・・」



 そして、僕らが再開したのは僕が小学4年生の時だった。


あとがき

どうもあすペンです

クールな幼馴染さん③はどうでしたか?

過去編まだ続きます

このときから幼馴染さんは大人ぽいです

ほんとに保育園児か?と思うほどに

次回は『妹幼馴染』です

お楽しみに

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