第5話クールな幼馴染さん②
今日も幼馴染さんは僕を理科室で待っていた。何もせずに。
今日の変わらず僕は、理科室に向かっていた。
その途中で幼馴染さんの担任の先生に出会った。
「おー、今日はあいつと一緒じゃないのか?」
あいつとは、幼馴染さんのことだろう。
はい、多分理科室にいると思いますよ。
そう伝えると、先生は少し考える仕草をして。
「これ、あいつに渡しといてくれ」
渡されたのは進路調査用紙だった。
なんで僕が?
「俺が、渡してもあいつに逃げられるからな」
そ、そうですか。
その風景が目に浮かび、笑顔が引きつてしまう。
「頼んだぞ」
そう言い残し先生は去っていく。
でも、そっか幼馴染さんは来年には三年生か。
幼馴染さんの名前が書かれている進路調査用紙見て、そう考えるのだった。
僕らの今のつながりは科学部の先輩後輩。
ほかの部員は幽霊部員でほとんど見たことない。顧問の先生も他部との掛け持ちでほとんどこない。
幼馴染さんは来年の夏休みが明けると卒部する。すると会う回数も必然的に減るだろう。そう思いと何故か胸が苦しくなる。どうしようももなぐらい悲しくなった。
でも、忘れてはいけないのは幼馴染だということ。
別に部活以外で会える。そう言い聞かせ部室に向かう。
幼馴染さんのいる理科室に。
コンコン。
2回ノックしドアを開ける。
「ようやく来たか」
幼馴染さんは窓側の席に座っていた。
どうやら本を読んでいたらしく、手元には文庫本を持っていた。
今日は何もしてないの?
僕はバックを机に置きながら聞く。
「ああ、私だって毎日毎日実験しているわけではない」
無表情のまま言う。
「そうだ、コーヒーを貰おうかな」
また無表情で言う。そのことで、若干の違和感を覚えたが、気にするほどでもないと思いコーヒーを淹れる。
あ、そいえば昨日母さんがチョコをくれたんだよ。
バックから箱に入っているチョコを取り出した。
「おお、これは美味しそうなチョコだね」
また無表情で言う。
チョコは幼馴染さんの好物でもあるのにこの反応はおかしい。
なんかしてるでしょ。
こういったとき幼馴染さんはたいていなにかしている。
「むっ、変なことを聞くね。今日は何もしていないといっと、言ったはずだが」
幼馴染さんはこちらを見ずに言う。
やはりなにかしている。
疑問は確信に変わった。なので、少しかまをかけてみることにした。
ねぇ、好きなの選んでいいよ。
蓋を開け幼馴染さんの前にチョコの箱を差し出す。幼馴染さんならすぐに手を出すはずだ。チョコは甘い香り放っており、チョコ好きにはたまらないだろう。
幼馴染さんは顔の向きも顔色も変えることなく選び始める。
「なら、この赤いチョコと丸いチョコを貰おうかな」
取っていいよ。
「いや、これ君のだろう?君が取ってくれ」
やはり無表情な幼馴染さん。
「どうした?取ってはくれないのか?」
くっ。
弄ばれている気分になる。
と、取らないなら僕が全部食べちゃうよ。
「ふ~ん。随分と酷いことを言うじゃないか。でも」
無表情のはずなのに、薄く笑っているように見えた。
「できるのかな?そんなと」
クッ。
図星だった。僕は幼馴染さんに勝てる日は来るのだろうか。
降参降参。なにしてるの?
今回も早々に白旗を上げる。
でも、幼馴染さんは。
「何を言っているんだい。今日は何もしていないといったろ」
そ、そうな?
「ああ、逆に何をしていると思ったのかな」
な、何て。
僕が持っていたことを全部言った。
全然動かないことや、無表情なことを。
「ふふっ。なんだそんことか」
声だけ笑う。
「私という人間はそもそもそんなに感情が顔にでづらいだろ。それに、動かないなんてことよくあることじゃないか」
い、言われてみれば。
「君は私の幼馴染だろ。それぐら、わかってくれていると思っていたのだが」
僕は無性に恥ずかしくなった。そうだ僕は幼馴染だ。
たとえ、いつも新しい発明でからかわれているからって、疑ってしまったのは恥じなければいけない。
ごめん、僕が間違っていた。
「ふふっ。わかってくれたらいいだ」
そんな話をしていたら、すっかりコーヒーを淹れていること忘れてしまっていた。
ごめん少し冷めちゃたかも。
そう言いながら僕はコーヒーを差し出す。
「大丈夫だよ。ありがとう」
僕はコーヒーを一口飲む、冷めてはなく程よく飲みやすくなっていた。そして一つチョコを口に含む。コーヒーの温度でいい感じにチョコが溶け、コーヒーに苦さを和らげる。
うん、コーヒーとあうね。
僕は幼馴染さんの方を見ると、幼馴染さんはどちらにも手を付けていなかった。
どかしたの?
「いや、たいしたことではない」
もしかして体調わるい?
そんなことが頭をよぎる。思い返せば昔もこんことがあった。
その時も倒れるまで誰にも言わなかった。
だからか。
すべての辻褄が合った。だからチョコにも反応しなかったのか。
ごめん。
「ち、ちょと」
動揺する幼馴染さんを横目におでこに手をあてた
幼馴染さんのおでこはあり得ないぐらい熱かった。不安が全身に渡るには一秒もいらなかった。
まるでモータの動いている機械でも触っている気分だ。
機械・・・。
「いきなり女の子の身体に触るなんて幼馴染じゃなかったら許されないよ」
何かを誤魔化すように幼馴染さんは早口にそういった。
ねぇ、ほんとのこと言わないとチョコあげないよ。
僕は声を低くして脅すように言った。
「ホントのことてなんの・・・」
あげないよ。
「クッ、しかたいな」
そう言ってしばらくして教室のドアが開く音がした。
「やあ、今日は完敗だね」
幼馴染さんが入ってきたのと、同時に全身力が抜けその場に膝をついた。
「ど、どうした?」
そう言いながら幼馴染さんは駆け寄ってきた。
近づいてきた幼馴染さんのおでこに手を当てる。
ふ、普通だ。
「ど、どうしたんだ?急に」
幼馴染さんがあたふたしているのは久しぶり見た気がする。
し、心配したの。
急に大声を出した僕に驚く幼馴染さん。
昔にもあったでしょ。無理して倒れたこと。
その言葉にバツの悪そうな顔した、幼馴染さん。
触ったらすごく熱くてさ。
僕は泣いていた、湧き上がってくるのは昔の記憶だった。
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