第7話
一週間後、審査部からメッセージが届いた。ルカの審査が完了したのだ。
審査の結果、彼女に施術を行うのは不適切だという判断が下されたそうだ。申込は受けられないという彼女への連絡は、審査部からするから僕は何もしなくていいとのことだった。審査結果についての詳細は書かれていなかった。
僕は、高島先輩に詳細を尋ねなかった。審査内容について、コンサルの僕らに説明がないのはよくあることだ。
月に一回、営業部と審査部の代表がインターネット上に集まる月例会議が開かれる。審査部と営業部、店舗運営課の代表、それに店舗の店長クラスが、店舗運営や要注意案件の情報交換をし対策を考える会議だ。
平社員の僕は会議に参加しないけれど、会議の後、課の代表が各々の課の全員に説明するミーティングがあるから、そこで情報を知る。
おそらく議題に上るであろうルカの案件についても、そのミーティングの時に僕らへ説明があるはずだ、と僕は考えた。
それからしばらくして、月例会議後のコンサル係のミーティングの時、僕は係長から思いもかけない説明を聞いた。
「最近、審査の結果、施術を行うのは不適切だと判断され申込を断った人物と、同一人物と思われる女性から、偽の身分証明書での申込がありました」
僕は、ルカのことだと思わなかった。
「あるミュージシャンに対してストーカー行為を行い裁判所から接近禁止命令が出ている女性です」
え、僕は顔を上げた。
「最初の申込時に弁護士の田原先生に確認してもらったところ、警察署、相手先のいずれも許可がおりなかったので、施術不可と伝え、本人も諦めたように見えました」
「しかし、その二日後、名前を変え、同じような内容での申込がありました。受けたのが最初と違う社員だったので当初は気付かなかったのですが、調べてみると、身分証明書の画像が偽造されたものとわかりました。それで本人確認を行ったところ、身分証明書の偽造を認めました」
「彼女を警察に通報し、審査部では彼女をブラックリストに載せることにしました。再び申込があるかもしれません。全部署、全店舗に情報を共有します」
彼女からの申込はもちろん、質問、相談も、今後一切、我が社では受けないという意味だ。
僕は少しだけ落胆した。
これでルカの運命の愛の証明は不可能となった。もう僕は二度とルカと関わることはない。運命の愛の証明を見届けることも。
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