第12話 訳アリ #未玖視点
優斗が去った後、胸がむずむずしたままずっと彼の後ろ姿を眺めていた。優斗は私にはっきりと敵意を見せ、完全に嫌われた。
それが苦しくて悔しくて、気付けば涙が溢れていた。
「訳アリ、ですね?」
「……はい」
目に溜まった涙をハンカチで拭って、自傷気味に当時の事を語り出す。
あれは今から二年前になる――。
★★★
今から二年前、私がまだ彼と付き合ってた頃の話。
優斗に双子の妹さんが居ることは前から知ってて、それなりに仲が良かった。お互いが相談をするぐらいには。
私達は周りから見てもお似合いだったらしく、それが嬉しくてたまにいちゃついたりもした。
ただそれがいけなかった。
私が彼を束縛しすぎて、その事が原因で妹さんとの関係が悪くなっていった。
「ねえ未玖。いちゃつくのは良いけど、流石に節度を弁えて欲しいの」
「優斗がそう言ってたの?」
「私がそう思ってるだけで兄さんは――」
「じゃあ良いじゃん。どう付き合おうが私の勝手じゃん」
私は愛香ちゃんにそう告げると今までに見たことがない怖い顔をしてて、思わず腰が抜けてしまった。
「勝手?兄を束縛しておいて?」
愛香ちゃんがゆっくりと近付く度に、私は一歩下がって壁際まで追い込まれた。とにかく怖くて仕方なかった。
ちゃんということを聞いておけばあんなことにはならなかったのに、当時の私はどうかしてた。
「愛香だって優斗を束縛してるじゃん!ずるいよ!」
「何がずるい?私はゆう兄の妹だもの。身内を心配するのは当然でしょ?」
「いっつもいっつもお兄ちゃんお兄ちゃんって……鬱陶しいよ!あんたなんか居なければ良いのに!!」
この言葉がいけなかった。幼少期に虐めを受けて毎日のように浴びせられていた言葉だったから。
でも気付いた時にはもう遅かった。
「はぁ……っ!はあ……っ!」
私は怖くなってそのまま逃げてしまい、後から聞いた話だけどあの後に秀太君が来なければ、そのまま身を投げようとしていたらしい。
★★★
それであの後色々な噂話のせいで愛香ちゃんは孤立してしまって、その事が原因で別れを告げられて今に至る。
ずっと後悔してた。何度も謝りたかった。でもそれは決して許されない事だと。
「……だから、もう良いんです。彼が元気そうならそれで」
「でも謝りたいんですよね?」
「良いんです……元々あの二人と私は住む世界が違うんですから」
あんなことさえ言わなければ、私は今も彼の隣に居れたのかな?あれ……おかしいな、涙が止まんないや……。
拭いても拭いても流れ出てくる涙は止まることを知らず、その場で静かに泣き崩れた。
「やっぱり……!嫌だよぉ……!ゆうくん……!」
久し振りに出逢ってしまった事で、今まで塞ぎ込んでいた彼への想いが溢れ出して止まらなかった。
また格好良いとこ見せて欲しかったのに……!
「バカ……私の……大馬鹿者ぉ……!!」
今も好き、なのにぃ……。
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