第11話 図書室
とある一列の本棚で面白そうな本がないか探してる時、偶然見つけた一冊に手を触れた時に誰かの手と当たった。
お相手の方は咄嗟に手を引き、俺はお相手の顔へと視線を移した。
「ご、ごめんなさい……どうぞ」
この学校の女子生徒で、よく見ると俺と同じく眼鏡を掛けていた。
「あ、こちらこそすいません。俺他の探しますので」
お相手は俯いていてちゃんと顔は見れなかったが、随分と優しい声でその声が印象的だった。
その場から離れ、また新たな一冊と出逢う。
「……ミステリー小説なんて読むんですね」
振り返るとさっきの人がそこに居たのだ。しかもさっき見つけた本を胸に抱きながら。
「こういう本、好きなんです。あと先程は失礼しました」
「い、いえ……!気にしないで下さい」
よく見ると俺と同じ色のネクタイをしていて、同級生と察した俺。受付に居た元カノと違い、絵に描いたような列記とした文学少女。
「これ読み終わりましたら、あなたにお貸しします」
「親切にどうも」
何でもないただの出会い。お互い名前を名乗らずにそのまま別れを告げた。
☆☆☆
何冊か確保した後、再度受付に居る元カノの元へ。
「これ、借りたいんだけど」
ドサッと軽く四冊の小説をカウンターの上に置いて、なるべく彼女と顔を合わせないようにしていると、先程の文学少女と受付で偶然出会う。
「あら、これは先程の……なんか増えてません?」
「彼、いつもこんな感じですよ」
貸し借りの記録が丁度終わった未玖は、俺に対して少しムッとした表情を向けた。
何も知らない彼女は首を傾げていた。
「あの……お二人はどういう関係で?」
「私達――」
「中学の時の元カノです」
「ちょっと!」
ぷくーっと頬を膨らませた未玖は俺に何か言いたそうな顔をしてるが、俺が顔を向けるとすぐにしゅんとなった。
あまり余計なことを言うな、と。
「そうなんですか……ということは今はお一人?」
「そんな感じです。ただ今はそういう気になれないので」
主に未玖のせいで。
「あ、私もこれお願いします」
彼女は思い出したかのように未玖に二冊の本を手渡した。
そのうちの一冊はかなり分厚く、簡単には読み切れそうにない本を借りるようだ。
二人はその本の事で盛り上がり始めて、その隙に俺は四冊の本を鞄に入れて昇降口へ向かった。
「あっ……」
「訳あり、っぽいですね?」
そんな会話が聞こえてきたが、全く気にせずに図書室を後にした。
俺だって未だに未玖の事は好きだ。だけど、愛香の事を考えるとどうしても別れた方が良かった。
「あんなに可愛くなりやがって……」
熱く火照った頬の熱は帰路に就いても全く引きそうになかった。
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