第13話 帰路

 あのまま帰路に就いた俺の前には篠坂さんと愛香の二人が居て、お互い無言のまま歩いていた。

 特に共通の話題がある訳でもなく、本当にただ並んで歩いているだけ。ただ違うとすれば


「篠坂さん、前」


「えっ?あう……っ!」


 ぽけーっとしたままの篠坂さんがそのまま電柱にぶつかってしまい、愛香は頭を抱えていた。

 今日の、あの後の篠坂さんは本当におかしい。


「らしくないですね」


「あはは……本当ですね」


 なるべく気付かれないように二人の後を着いていく。


「私、こっちなので」


「あ、はい。えと……」


「私の事は愛香で良いですよ。あと兄の方も出来れば名前で呼んでください」


 友達として接しようとしてくれている愛香なりの気遣いに感謝しつつ、篠坂さんはぱぁっと明るくなった。

 まるで周りに満開の華が咲いているかのように。


「はい……っ!今日はありがとうございました!」


 綺麗にお辞儀をした後、微笑ましいぐらい明るくなった篠坂さんは屋敷の方へと消えていった。


「……ふぅ。兄さん、もう良いですよ」


「流石にバレてたか……」


「気付いたのはつい先程ですけどね」


 俺の近くへ寄ると軽く辺りを見渡した後、胸へと飛び込んできた。突然の事過ぎて頭の中が真っ白に。


「ねえお兄ちゃん。ずっと傍に居て」


「愛香……?」


「お兄ちゃんはまだ……未玖のこと、諦め切れない?」


「……分からない。好き、だけど……この気持ちが前と同じなのかも」


「そっか……」


 愛香は俺の胸元からゆっくりと離れると、俺の顔を、目を覗き込んだ。この時の愛香は大体的確に言い当ててくる。


「それは友達としてじゃないですか?」


 友達として……なのだろうか?


「久し振りに逢って……どうでした?まだ好きって気持ちが強かったですか?」


「……分からない」


 いろんな感情が入り交じってぐちゃぐちゃになってて、後からなんだかんだ言ってもアイツが好きだって気付いたぐらいだ。


「今はまだ分からないかもしれませんが、そのうち分かる時が来ますよ」


「そのうち、か」


「私だって秀くんの時、結構掛かりましたから」


 それもそうか。いつか分かる時が来るか。


「で、愛香」


「はい?」


「いつまでそうしてるつもりだ?」


「はて、何の事やら」


 なんでこいつと腕組まなきゃいけねえんだよ……そんな貧相な胸にィッ?!


「ちょ……っ!腕が!!お、おれ……るぅ……!!」


「兄さん?」


「悪かったから!腕!!折れるってば!!」


 そういえば心の声聞こえるんだった。


「なら最初から言わなければ良かったんです」


「はぁ……っ、はぁ……っ、だからってぇ……今心の声聞くな……」


「またやられたいですか?」


「勘弁してくれ……」


 ここで護身術教えたのが仇になるなんてな……とほほ。

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