第6話 篠坂家
結局このまま彼女の家まで向かい、道中の視線や噂話が嫌って程入ってきて心苦しかった。
こりゃ明日は居場所なくなっちまうなぁ……とほほ。
だけど篠坂さんは顔を赤くしたまま、目が合えば幸せそうな表情を浮かべてて、そんな気持ちはどうでも良くなった。
「ほぉ……やっぱお嬢様ってのもあって、でけえな」
「広すぎてたまに迷子になってしまいますけどね」
「だろうな」
というかここ、今日の
すると篠坂さんはもじもじとしながら、恥ずかしそうに俺にこう問いかけた。
「あの……もし宜しければ、上がっていきますか?」
「え、良いのか?」
「はい!折角ここまで来て頂いたのに、何のお礼もなしは篠坂の名が廃ります……!」
そんなこと無いと思うけど……でもまあ丁度良い。篠坂さんの案内である程度の部屋割りやカメラの位置を把握する手間が省けるし。
何より近道が見つかるかもしれない。
「ではお言葉に甘えさせて貰うよ」
「で、では……ど、どうぞ」
篠坂さんはガチガチに緊張した状態で俺の前を歩いていく。
そんな彼女を余所目に、門から玄関までのカメラの位置をしっかりと記憶する。かなりの量のカメラが四方に仕掛けられており、死角を見つけるのは難航しそうだ。
そんなこんなで気付けばもう玄関口、彼女が扉を開けると掃除中だったメイドさんと彼女のお付きの人?が一斉にこちらに視線を移した。
「「「お帰りなさいませ、那奈お嬢様」」」
「ただいま帰りました」
「あのお嬢様、そちらの方は……?」
お付きの人らしき人物にかなり警戒されてて、今にでも撃退する格好をしている。まあ簡単にはやられませんけど。
「香坂!彼が例の人なのです!彼に失礼ですよ!」
え、あの話を屋敷中の人にしてるのかよ……?!
「この方が例の……これは大変失礼致しました」
香坂さんは俺に謝罪をして、そのまま部屋案内された。彼に気付かれないようにカメラの位置を把握していく。
外より中は少なめか……入ってしまえばある程度は簡単にお目当てのものが手に入りそうだ。
「こちらで少々お待ちください。着替えてきます」
客間だろうか?物凄く広い部屋に通された俺は、驚きを隠せずに居た。こんな部屋がいくつもあるのか……。
今部屋に居るのは俺と先程の香坂さんの二人。
「永谷様、どうぞお掛けください。お飲み物は珈琲で宜しいでしょうか?」
「あ、すいません……ありがとうございます。頂きます」
ふかふかのソファーに腰掛けて、高坂さんが俺の席の前に珈琲を置く。珈琲から良い匂いが。
「ありがとうございます」
彼は軽くお辞儀をして、すすっと後ろの方へと下がっていった。んー、美味しい。
すると扉が開いて、部屋着に着替えた篠坂さんともう一人のお付きの方だろうか?もう一人部屋にやってきた。
「お待たせしました。永谷様」
「隣の人は?」
「お初にお目に掛かります、お嬢様専属のメイドの早瀬と申します。以後お見知りおきを」
軽く会釈をした後、さっきの彼とは違って篠坂さんが座った位置の近くまで近付いていた。
成程、ということはあっちは護衛か。
「永谷様、そちらはお口に合いましたか?」
「うん、凄く美味しい。良い豆でも使ってるんだろうなぁって」
「はい!珈琲はお父様がお好きなんです。なので厳選して用意させてます」
だろうな。じゃなかったら、こんなに美味しい珈琲はなかなか味わえない。
そのまま篠坂さんと楽しい時間を過ごした。
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