第4話 告白のような何か

 あのままの状態で教室に着いてしまった俺達一行は、そりゃまあ変な目で見られた。主に俺が。

 ただ愛香は先程のこともあって、無意識に秀太を避けていた。

 まあ無理もねえ、振られたばっかだしな。


「その調子だと今日は俺一人の方が良さそうか?」


「……大丈夫」


 そんな苦痛な顔見せられたら嫌でも気になるだろうが。


「今日は俺一人でやるから、お前はゆっくりしてろ」


「うん……ありがと、お兄ちゃん」


 元の状態に戻るまでは仕方ない、よな……。

 愛香と同じ境遇なら、俺だって死ぬ程めっちゃ辛い。


「秀太。今日は俺一人で行かせてくれ」


「え、でも……」


「あいつはな、お前に振られてかなり辛い思いしてるんだ」


 俺が愛香の代わりに少々キツく言い放ち、秀太は黙り込んでしまった。


「……分かったよ」


 渋々承諾した秀太にはちょっと悪いが、今回ばかりは許してくれ。







 ☆☆☆









 その日の放課後に秀太からある程度の情報を得て、夜に備えてどうしようか悩んでたら、突然篠坂さんに声を掛けられた。

 というか俺見られてね?愛香に至ってはなんかすっごい俺を睨んでるし。


「あ、あの……!も、もし宜しければ……そ、そのぉ……あうぅ……」


 めっちゃ顔赤いし、熱でもあるのかな?


「大丈夫?なんか顔赤いけど」


「ひ、ひゃいっ……!だ、大丈夫れす……!はうぅ……噛んじゃった……」


 なんだこの可愛い生き物は……そりゃ校内の男子共が彼女に夢中になる訳だ。

 にしても彼女、なんで俺の前だけこんな感じなんだろうか?他の人だと比較的まともって言うかちゃんと話せてるのに。


「わ、私と……い、一緒に帰りませんか……?」


「俺と篠坂とで?」


「は、はいっ!駄目、でしょうか……?」


 それを聞いた瞬間に教室に残ってた連中が騒ぎ始め、一気に注目を集める俺。一体何がどうなってんだ?!

 ていうか篠坂さんめっちゃ泣きそうなんだけど!


「俺なんかで良ければ……」


「あ、ありがとうございますっ!」


 ぱぁっと輝きを放った笑顔に俺を含めた男子は彼女に魅了され、意中の相手が居る女子達は特定の男子を悔しそうに睨んでいた。

 ただ一緒に帰るってだけでこれか……彼女って凄いんだな。


「ちょっと兄さん……!」


 愛香に引っ張られ、篠坂さんらと少し距離を置いた位置で小声で話し始めた。


「一緒に帰っちゃってどうするんですか……!」


「不可抗力だ……!ちゃんと時間までには帰るって」


「……約束だからね?」


 だから急にしおらしくなるなって、対応に困るだろ。

 愛香は鞄を持って先に教室を後にすると、ぞろぞろと回りの連中も後を追うように出ていき、彼女と二人きりに。


「えへへ……っ」


「なにか嬉しそうだね……?」


「そ、そんなことない、です……」


「そう……でもなんで俺なんかと?篠坂さんなら他の人達と一緒にでも――」


「貴方じゃなきゃ……嫌です」


 俺じゃなきゃ嫌って、それどういう……。


「私、篠坂那奈は……永谷君の事、お慕え申し上げておりまして……そ、その……」


 お慕え申し上げるって、それもう告白じゃねえか!


「お、おお……おちゅ……はうぅ、また噛んじゃった……」


 ここに入学してまだそんなに日が浅いのに、篠坂グループのご令嬢こと篠坂那奈に告白を受けた。

 というかなんで俺なんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る