第3話 お嬢様との邂逅
愛香が落ち着いた後に屋上から自分達の教室へ向かう為、屋上の扉を開けると誰かの声が扉越しに聞こえた。
これは……女性の声……?
「あいたたっ……」
「あ!だ、大丈夫ですか?」
「いえ!こちらこそすみません!」
綺麗な黒髪に整った顔、出るとこは出ていて絶世の美女と言われれば誰もが納得するレベルの女性。
だけど何処か聞いたことのある声色で、理解するのには早々時間は掛からなかった。
「え、篠坂……さん?」
なんで彼女がここに……?
「す、すみません……少々気になってしまったもので……」
一瞬だが瞳が輝いてたような……そんな気がした。
「何そこで突っ立ってるんですか?蹴りますよ」
先程とは打って変わって仏頂面の愛香が、げしげしと俺の足を蹴りながら文句を言ってきた。
「蹴ってから言うな。すぐ退くから」
「?誰かいらっしゃるんですか?」
「あ、ああ……ちょっとね」
俺が入り口から退くと愛香が後から出てきて、篠坂さんは俺達二人を交互に視線を送っていた。
篠坂さんはジト目で俺を睨む。ん?なんで睨まれてんだ?
「つかぬことをお訊きします!お二人はお、おお……お付き合いされているのですか?!」
「「は?」」
見事にハモった。
☆☆☆
俺達が双子の兄妹であることを打ち明けると、人が変わったかのように何度も頭を下げて謝罪していて、流石に対応に困った。
でも端から見ると俺達はそう見えるのか。
「本当にごめんなさい……!私、よく早とちりするので」
「あ、あはは……」
それにしても本当に可愛いなこの人、流石有名人というべきか人気者になのも頷ける。
あ、目が合った。
「あ、あのぉ……そ、そんなに見つめられると……恥ずかしい、です……」
真っ赤な顔の篠坂さんがそんなこと言うから、左隣に居る愛香からジト目が飛んでくる。
「……これがジゴロですか」
「お前もさっきまではあっち側だったろうが」
「う、うるさいですっ……!」
強く反論しない辺り、自覚はあると。
愛香は涙目になりながら膨れっ面で俺を睨み、俺は小さく息を吐く。
「むむっ……」
すると右隣に居た篠坂さんも、愛香のようにちょっと不機嫌になって俺を睨んでいた。ん?なんで睨まれてるんだ?
ただこれ、不機嫌というか拗ねてる……?
「っ……」
大好きな兄を取られたくないからか、愛香は俺の腕に抱き着いてくる。そのせいで柔らかい感触が腕に伝わる。
思った以上に意外とあるんだな……。
「むうっ……!」
何故か篠坂さんも同様に俺の腕に抱き着き――って!なんで篠坂さんまで?!ていうか愛香より大きいせいで感触がリアルって言うか……。
「いででっ……!愛香……っ、つねるな……!」
というかなんでこうなってんだよ!何もしてねえだろ?!
「お兄ちゃんから離れろ……!」
「そ、そちらこそ……!」
今度は俺を挟んで両者睨み合いになり、四月早々悪い意味で目立ってしまい、俺はこの先のことを考えただけで変な頭痛を憶えるのだった。
これから、どうなっちまうんだろうな俺。
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