第2話 裏の顔
例のお嬢様のせいもあってか、昇降口でもかなりの人集りが出来ており、なかなか抜け出せないで居た。
どうやって教室に向かおうかと考えていたら、聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。
「おーおー、今日もすげえな。あのお嬢様は」
「おはよう秀太」
「あ、おはようございます。秀くん」
「おはよう二人とも」
俺達の親友で幼馴染で愛香の初恋の人の
だが彼には既に彼女というか許嫁が存在しており、愛香はその事を知らずに居る。
「優斗、ちょっと良いか?」
「なんだよ秀太」
「仕事の件だ」
その言葉を聞いた俺と愛香はがらりと表情を変える。
「ただここじゃあまずい、とりあえずここを抜け出してからにしよう」
俺と愛香は頷き、人集りとは別に空いている場所が出来た場所に向かってなんとか昇降口を抜け出すと、人が滅多に来ない屋上へと足を運んだ。
その際に例のお嬢様に見られているとも知らずに。
☆☆☆
屋上に着いた俺達一行は、仕事で身に付けた殺気で辺りを軽く見渡す。が、誰も居ないようだった。
殺気を抑えると改めて秀太に向き合う。
「今日の依頼はこれだ」
秀太のスマホの画面には、今日の依頼人の要望が書いてある画面を見せつけられた。
あ、一応俺達が何者か説明しておく。
俺達は巷ではちょっとした有名の怪盗団『サティスファクション』という名前で、入手困難な物品をあの手この手で頂いていく。
大抵依頼が送られてくる相手は法外な資金を提供してくれる為か、度々警察にもご厄介になることもある。
「ふむ……この額で高額ダイヤのネックレスを奪え。か」
「不満か?」
「ちげえよ。なんでそこまで金賭けるのかなって」
「それだけ私達の事を信頼しているって言うことじゃないですか?兄さん」
まあ俺らに盗めないものなんて、この世の中ひとつも存在しねえからな。
「オーライ、決行日は?」
「今日の夜とのこと」
「また急だな……分かった。依頼主に宜しく言っといてくれ」
「おう。それじゃあ、また夜に」
そのまま秀太と別れようとしたその時、顔を真っ赤に染めた愛香が秀太を引き留めた。
まあ振られるけどな、秀太の奴は許嫁のことが何だかんだ好きっぽいし。
「あ、あの……!わ、私……秀くんのことが……!!」
「あー……ごめんね。僕には許嫁が居るから」
ほらな。ただショックが強すぎたのか、愛香はずっと俯いたままで再起まで時間が掛かりそうだ。
なんとも言えない静かな時間が流れていき、その場に崩れ落ちた愛香。何度も謝ってこの場を後にする秀太。
「……兄さんは、知ってたんですか。秀くんに許嫁が居ることを」
「まあ、な……同じ怪盗団で幼馴染、だし」
お前があいつの事が好きだってことぐらい、普段の仕事でも見え見えだ。こいつもちゃんと青春してんだな。
啜り泣く愛香の頭を撫でながら、彼女が落ち着くまでずっと傍に居てあげた。
愛香の初恋はこんな無惨な形で終わりを迎えた。
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