第6話「"復讐"・・・・・・なのかも?」(あさひside)

 「大丈夫?」

 愛花に優しく声を掛けられる。

 「うん。大丈夫」

 私がそう言うと、刑事の楠谷という男が話し始める。

 「被害者は少し離れた場所にあった荷物から、今野美香さんで学生。三人の友人と浜辺に遊びに来ていたらしく、友人の証言によれば、被害者がお手洗いに行くとどこか行ったきり戻ってこなかったということでした」

 「ふむふむ。・・・・・・ていうか、なんで刑事さんが私たちに情報を教えているんですか?」

 私が言うと、楠谷は腰に手を当てる。

 「あの童顔探偵に頼まれたんだよ。この事件、もしかしたら〝復讐〟の可能性があるって」

 「〝復讐〟?」

 私たちは声を揃えて言うと、彼は「ああ」と答える。

 「まあ、あの探偵が言っていることは十中八九当たっているんだ。だから、君たちに協力している」

 「なるほどです・・・・・・」

 納得を示すと、彼は再び事件の話に戻る。

 「さっき復讐の可能性があると言ったが、十数年前に起きた事件と若干だが手口が似ているんだ。だが、その手口より遙かに今回の方が、度が過ぎている」

 「度が過ぎている?」

 愛花が言う。

 「ああ。十数年前、つまり一九九九年の今に起きた事件は刃物による一刺しで終わっているが、今回の場合は違う。被害者には複数箇所の刺し傷、打撲痕が見つかり、更には腕が切られているんだ」

 「尋常じゃない・・・・・・」

 「ああ、尋常じゃない」

 私の言うことに彼が同意を示す。更に続けて言う。

 「それに、現場でこんなのが見つかった」そう言い、彼は白い手袋で私たちに見せてくる。

 「何ですか? それ?」

 愛花がそれを覗くようにして言う。

 「分からん。何かの破片のように思えるが・・・・・・」

 彼が持っていた物――それは何かが割れて出来た、キラキラした物のように思えた。

 

 

 

 「ごめん、大丈夫?」

 立川が遅れてやってくる。

 「どこに行っていたの?」

 愛花が言うと、彼は理由を説明する。

 「急にお腹が痛くなっちゃって。それで慌ててトイレに行っていたんだけど、入っているときにパトカーの音が聞こえて何事かなって思っちゃって・・・・・・。何事も無ければ良いんだけど」

 早口で捲し立てると、「まあ何事も無かったから良いんだけど」と愛花が言う。

 「ところでさ、なんで私たちが今日遊ぶことを知っているの?」

 私が言う。

 「ああ、そのことか。――実は、二人が講堂で話している内容を盗み聞きしちゃって」

 「え」

 「ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだけど、夏休みがどうしても暇で」

 「そうなんだ。まあどっちみち良いけど」

 「ありがと」

 

 立川も入れた三人で、私たちはビーチテントで過ごしていた。

 愛花が「暑いのは無理!」と嫌がるものだから、仕方なく日陰になっているビーチテントで過ごしている。

 「・・・・・・ってかさ、愛花」

 「なに?」

 私は愛花を見る。

 極度に磨かれた肌の白さ加減。

 胸のボリューム感。それに伴う胸と胸の間。――私にはないもの。

 そして、目がきゅるっと、小さな口から彷彿させる子どもっぽい顔。

 それらを合わせて、彩ってくれる紫と青が合わさった水着。

 「うーん。良い」

 「・・・・・・何が?」

 「やばっ」

 ――つい興奮してしまって独り言が出てしまった・・・・・・!

 「はわわ」

 「あさひさ、何か良からぬことでも考えてなかった?」

 「ギクッ」

 愛花に図星を言われ、思わず私は腰を引いてしまう。

 「ねえ、後でゆっくりと話そ」

 満面の笑みで愛花がゆっくりと私に近づいてくると、突然笑い声を出す人物がいた。

 「何が面白いの?」

 愛花が言う。

 「いやだって・・・・・・、端から見れば、仲が良いんだなって」

 思わず二人で顔を見合わせる。

 「なんでさ‼」

 「なんでさ‼」


 ◇幕間

 

 「ちょっと、手洗い行ってくる」

 そう言い、立川は愛花とあさひがいるピーチテントから離れ、彼女らから見えない位置まで歩く。

 胸がザワつく。

 いつ振りだろう。

 女子と遊ぶのは。

 確か二年前だった気がするけど。

 まあいいや。

 今日で、俺の人生は終わりだ。

 ポケットから血の付いた包丁を取り出して言った。

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