第5話「事件発生」(あさひside)
夏期休暇に入って数日。
約束の日――八月十三日がやってきた。
その日――八月十三日が訪れた。
私は出かける準備をしながら、あの立川のことについて考えていた。
あの人、一体何を企んでいるのだろうか。
もし企んでいなくても、どうして今頃になって故人を探すようなことをするんだろ。
それに、あのワトソンさん、どうしちゃったんだろ。
何か関係でもあるのかな。
確か、『聖女の救済』で出てきたトリックを用いて事件を起こした人が、ワトソンの身近な人で、意外なる人間関係や家族が明らかになったりしたけど。
あれとどう繋がるんだろ。
もしくは、繋がると言う問題ではなくて。
ワトソンが個人的に追っていた、人物だとしたら。
一応なりとも、辻褄は合う気がする。
――あっ。
いつの間にか考えていたのか、時計が既に十時過ぎをお知らせしていた。
私は玄関を出て、家の鍵を閉める。
海辺に着く頃には、既にもう愛花がいた。
「あれ? もう着いていたの?」
私が愛花に近寄りながら言うと、彼女は「ああ、うん」と頷く。
「・・・・・・あれ? そんなに荷物多いけど大丈夫なの?」
そう言うと、後ろから声が聞こえたので振り向く。そこには、あの立川がいた。
「え?」
「ああ、なんか突然昨日の夜に連絡があって、『一緒に遊びたい!』って言うものだからさ、連れてきちゃった。良いよね」
「そりゃ構わないけど、なんでそのことを知っているの?」
「さあ? それは私でも分からない」
二人で話していると、立川が「それじゃ、行こっか」と声を掛けてくる。
私たちは砂場を歩き、ピーチテントを立てるところを探す。
夏期休暇に入っているところが多いのか、やたらと浜辺にいる人が多く、特に大学生らしき人達が多くいるように思えた。
「ここにしない?」
彼が立ち止まって言うと、「良いんじゃない?」と愛花が言う。
海が丁度一望でき、水平線が綺麗に見える。
「あさひ、ちょっと手伝って」
愛花に言われ私はピーチテントを立てるのを手伝う。
「あ痛っ」
どこかに躓くと、愛花が「もう~、何やってん・・・・・・、え?」と途中で声色を変える。
「どうしたの?」
声を掛けるが、愛花は聞こえていないのか立ち止まったままだ。
私は躓いた先を見る。
すると。
そこにあったのは。
半端で埋まった人間の血で染まった手が、そこにあった。
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