第4話「またもや不穏な流れ」(愛花side)
夏期休暇に入る前日。
なぜか私とあさひはまた、ワトソンに呼ばれあの公園に来ていた。
前回と同じく、また彼は遅くやってくる。
「お待たせ」
彼がそう言うと、あさひが話し出す。
「あの、また私たちを呼んだのって」
「ああ、言わずもがな、あの事件強いてはあの犯人についてだ」
「なるほど」
「そのことなんですけど、あまり考える節がないように思うんですけど」
私がそう言うと、彼は「そうか」と言う。
「でも、この事件には何か裏があると思うんだよ。まるで、犯人が誰かを庇っているように」
「誰かを? 庇う?」
私が疑問に付す。
――うーん。誰かを庇っているのか・・・・・・?
改めてあの事件について、頭の中で思い出す。
あの事件は男女の縺れから発生した事件だし、さほど違和感がないと思う。けど、強いて言うならば、どうして殺害現場から発見現場の浜辺へと持ち運んだのか、そこが唯一の疑問点、かな。
「浜辺・・・・・・」
私が思っていることと同じなのか、あさひがそう呟く。
「浜辺か、それがどうかしたのか?」
「いや、何となくなんですけど。どうして犯人はわざわざ、発見現場の浜辺へと被害者を動かしたのかなって。通り魔の犯行だと思わせば、移動する必要はないと思いますし」
「そうだな。他は何かあるか?」
「うーん」
私とあさひが声を揃えて悩む。
――他に何かあるって言われても・・・・・・。そもそも、犯人はまだ独身だし、庇う相手なんていないと思うけど・・・・・・。
「あ」
私は思わず声に出す。
「他にまだあったのか?」
「違和感とは言えないですけど、確か、犯人の甥っ子に当たる人が立川悟という、今回の事件の犯人を探して欲しいと私に頼んできた人がいます」
「なるほど・・・・・・」
ワトソンは顎を撫でる。
「その人、今連絡が取れる状態か?」
「いいえ。昨日、もしかしたらって思って連絡をしたんですけど、通じなくて・・・・・・」
「ああ、やっぱり」
「やっぱり?」
「気にしなくて良いよ。じゃ、またな」
そう言い、彼はその場を立ち去る。
帰り道。
「この事件、何か裏があるってあの人が言っていたけど、何だろうね」
あさひが言う。
「うん。立川も気になるし」
「あのさ」
「なに?」
「あの立川って言う人さ、一体何の企みがあって私たちに近づいているだろうね」
「企み?」
「そう。もしかしたら、私に告ってきたのも何か狙いがあってやったことかも」
あさひにそう言われると、「うーん」と私は唸る。
「確かに、そう言われてみれば何か狙いがあってもおかしくはないのかな。でも、なんでだ?」
「分からない。ただ、私の勘が」
「なるほど。何やかんやであさひの勘は当たるし」
「なにそれ~」
私があさひをいじると、彼女は笑いながら言う。
「でもさ、私も立川には何か策略があるんじゃないかって思ってる」
「愛花も?」
「うん。何だろ、彼には何だかーー、復讐みたいな色が見える気がする」
「復讐? まさか」
あさひが言う。
「彼には何だか、この依頼をした理由(わけ)があると思う。ほら、彼、探して欲しいって言ってきた人、祖父とか言ってたし」
「あれ? でも、今回の事件は〝叔父〟だと思うけど」
「あ」
――何だろ、この違和感。何かが、私の頭の中で突っかかる。
何だろう。
何が突っかかっているんだろ。
彼に、騙されているような気分。
何だろ、この違和感。
「どうしたの?」
あさひの声に私は現実に呼び戻される。
「そんなに思い詰めた顔をして。何か考えてたの?」
「まあ、そうだね。あさひが言ってくれた違和感について、考えてた。」
「違和感?」
あさひが首を傾げる。
「うん。立川が頼む時に言っていたのは〝祖父〟なのに、あさひがさっき言ってくれた通り、〝叔父〟なのに、どうしてなんだろうって」
「確かに、気になる」
「それに、ワトソンの反応がいつもと違うのも気になる」
「そうなの?」
「そう。あの人、特別な事情が無い限りはあまり深入りをするような人ではないはずなのに、どうしてあそこまで・・・・・・」
「とにかく、一度聞いてみた方が良いんじゃない?」
あさひにそう言われ、私は何となく返事を言う。
――聞いても、恐らくはぐらかされる。
そう私の勘が過(よぎ)った。
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