第2話「告白」(愛花side)

 「なに? 話って」


 私は立川に呼び出され、大学校舎の裏に来ていた。


 彼は何だかモジモジとしており、緊張している様子。


 「・・・・・・単刀直入に言うけど」


 そう言った直後、彼は目線をバッと私に向ける。


 「・・・・・・俺、愛花の友人が好き、なんだ」


 ――私じゃないんかい‼


 内心ツッコみをいれつつ、私は「友人?」と疑問に付す。


 「うん。何だっけ、確か、名前は」彼は言葉を切って、またモジモジし出す。


 「何? 誰なの?」


 「あさひって言う人」


 「え」


 「いきなりこんなこと、言い出して困るよね。ごめん」


 彼が立ち去ろうとすると、私は「全然、困らないよ」と言う。


 「えでも」


 「大丈夫だよ。あさひなら、きっとオッケーを出すよ」


 「ほんと? なら昼ぐらいにここに呼び出して」


 「あ、うん」


 そう言うと、彼はスキップしながら立ち去っていく。


 ――すっごい、嬉しそうじゃん。あの人。


 私は教室に戻ると、「何だったの? あの彼」とあさひが聞いてくる。


 「うん、ちょっとね」


 「まさか、告白?」


 あさひがニヤつきながら言う。


 「ううん。全然違った」


 「じゃ、なに?」


 「それは彼に会ってからの秘密だよ」


 「えぇ~、なにそれ」


 「でもなんか、私じゃなくてあさひに何だか気があるみたい。だから、昼頃に私が行ったところに行ってみると良いよ」


 「じゃあ、行ってみようかな」


 あさひがそう言うと、同時に開始のチャイムが鳴り出す。



 

 昼頃。


 私は彼の告白がつい気になり、覗き見していた。


 彼はあさひに向かって、手を差し伸べている。


 顔は恥ずかしさの余り、紅潮しており、何だか見ている方が応援したくなる。


 「ごめん。今はちょっと」


 あさひが言う。


 「・・・・・・そっか。ごめん、急に呼び出して」


 立川はそう言い、その場を立ち去る。


 私はその背中を見て、ああ、と残念な思いになった。


 ――あっやばっ!


 私は慌てて物陰に身を隠し、あさひに気づかれないようにする。


 「・・・・・・あれ? 愛花?」


 ――気づかれたー‼


 「なんでここにいるの?」


 「そ、それは」


 私は思わず身振り手振りが激しくなり、隠し事がバレてしまう。


 「あ、さっきまでのこと、見てたんでしょ」


 「ギクッ」


 「なぁんだ~、知ってたんだ」


 あさひがいたずらっぽく言う。


 ――恥ずかし。


 「ところでさ、なんで断ったの?」


 「あ、ちょっとね。彼、性格とかは良いんだけど、イマイチピンとこなくて」


 「そうなんだ。じゃ、元の場所に戻ろ」


 「うん」


 私たちは元の場所――図書館へ戻っていった。


 

 「じゃ、また明日」


 「うん。明日」


 私とあさひは大学前で別れ、家までの帰路につく途中、携帯が鳴る。


 ――ワトソン。


 「もしもし」


 『もしもし。目的の人が見つかったぞ』


 「え、もう?」


 『ああ。だが、それは生きている状態じゃなく』


 「生きている状態じゃなくて?」


 私は嫌な予感がしつつも、言う。


 『亡くなっている状態だ』


 「え」


 『なぜ君のところに故人の捜索依頼が来たのかは分からんが、とりあえず、見つかったは見つかったが、その人物は既に亡くなっていると伝えてくれ』


 「あ、はぁ」


 『それじゃ、僕はこれで』


 そう言われ、電話が切られる。


 ――彼、このことを知っていると思うんだけどな。


 なんで捜索依頼なんか、出したんだろ。


 私はそう疑問に思いつつ、立川に先程のことを電話で伝えた。



 

 ◇幕間



 

 「ふっ。噂通り、あの人の速度は速いな」


 男は薄暗い部屋の中、呟く。


 「俺があの人に依頼したのは、まだ計画の末端だ。まだまだ計画が動き出したと言えんよ。――それに、あの彼女のことが気がかりだ」


 男はある彼女――今日昼頃に告白をした人物を脳裏に浮かべる。


 「彼女に気づかれなければ、この計画は成功する」


 彼は部屋を歩き出し、カレンダーを見る。


 そして、ナイフを刺す。


 「この日が、あいつの命日だ」


 そう男が突き刺した日――、八月十三日だった。

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