第2話バイト仲間

僕たち、恵光警備保障のガードマンは下は18歳から上は68歳まで色んな問題を抱えつつ働く人間のごみ溜めだ。

春崎は3月に大学を中退し、就職活動をしながらバイトに勤しんだ。

当然、若い連中と仲良くなる。

それが、沖川だ。ヤクザみたいな顔つきで体がでかい。

耳にはタコが出来ている。そう、柔道部出身であった。

沖川が運転して、助手席に乗り現場までよく乗せてもらった。

必ず、宇多田ヒカルの曲が流れていたが。

何故か沖川は、春崎には敬語を使うが、周りはべらんめえ口調。

2人は共に警察官を目指しており、春崎が沖川に勉強をよく教えていたからだ。


給料日。

「春ちゃん、今日、仕事終わったら飲みに行かない?今日は、市バスで来たんだ」

春崎はニコリと笑みを浮かべ、

「いいね。飲みに行こう。千代でいい?」

「あっ、凛ちゃんの店ね」

「まだ、千代婆さん生きてるよ」

「すぐ、死ぬって」

「死なない死なない、あの婆さんは」

2人は、電車で現場に向かった。

片側交互通行の仕事。

遥か遠くの沖川から、無線で5分くらいこっちがわだけ流すと、言われ車を止めていた。

沖川は、工事用看板に隠れ脱糞していたのだ。

これは、居酒屋で聴いた話だが、春崎は爆笑した。


ヤクザみたいな顔つきの大男が、

「くっそ~、と言いながらウンコしたんだ。笑わないでおくれよ」

と、言う。

三軒飲み屋を梯子した。夜中の2時になると、春崎がアパートに向かって歩き出すと、沖川はもう一軒!と言う。

しかし、翌朝も仕事だ。沖川の言葉を無視して歩き出すと、後方から、


「クソ、ハルサキ~っ!」


と、叫んでいた。

翌朝、出勤すると沖川は出勤していないった。

課長が沖川と連絡取れたのは、昼過ぎだった。

社長はこんな事もあると、沖川を許した。

そして、春崎は昨夜の暴言を吐露すると、沖川は真剣に謝っていた。

それから、間も無く沖川は彼女を妊娠させて、コンクリートブロック製造会社に就職して、恵光警備保障を退社した。

それから、二度と沖川の顔を見る事はなかった。


その後は、吉田と言う名の世界史大好き人間と飲む事が多くなった。春崎より1つ上で、その晩はトルデシリャス条約の話しで盛り上がった。

彼は苦学生で、大学に合格するも入学金が払えず、この会社で働いていた。

春崎と事情が似ている。母親がガンを患い、退学を余儀なくされた。

春崎の人間関係は円満であったが、就職先が決まるのは間も無くの事であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る