第十二淫首塚冥雄との馴れ初め


首塚冥雄は特殊な事情、特殊な経緯、特殊な国際電話によって童貞の事を知っている、第一印象は殺されるかと思っただった、必死に呼びかける彼、世界の命運よりも、国の命運よりも、自分の命運を大切にするのは全生命の共通理念だと思われる、だが首塚冥雄が司るのは冥界であり、厳密には死属性である、死を死なすというあまりにも荒唐無稽な出来事を成り立たせるのは砂漠で一粒の砂金を探すのに等しい。


しかし、首塚冥雄にとって、童貞はその一粒の砂金であった。


彼の部下になり、眷属になろうというのは、その特殊な三位一体のせいであった。


改革するならば、聖域でも作って欲しい、しかし、首塚冥雄の支配する冥界、冥界ミクトランには、聖域なんていうのは、そもそも、存在しないのだ。


童貞は性的欲求が不満してあまりにも異常極まる特異点を生み出そうとした。


捨てる神あれば、拾う神あり、という言葉が日本にはあったらしい。


極道には盃という仕組みがあり、童貞の傘下、しかし、童貞にとって首塚冥雄は義父のようなものであり、立場上、童貞を親にしながら首塚冥雄もまた親である。


童貞の恐るべき執念、それは、どこまでも、世界を曲げて、歪ませてしまうだろう。


童貞の求めた世界は、ただ、自由に人を沢山殴って、不良の語彙ならば、高校デビューをただしたかったという話になるが、彼のようなシャバい男では薬物中毒が関の山だろう、しかし、それは、あまりにも固執する物を生んでしまったのである。


日本人が海外に移住する、人材の海外流出、それは日本の価値観、例えば男尊女卑の名残、もっと言えば、意味もなく和の心さえとりあえず確保する集団主義、個人主義などという事はいつだって絵に描いた餅のようにも見えて絵空事にも見えるからだ。


ただ、世襲貴族と呼ばれる政治家だけがその実、個人主義に甘んじている。


首塚冥雄が日本に来日して、幾星霜の年月が流れた。


あらゆる世界の可能性の断裂、断末魔を彼は彼の殺戮によって自分のみで自分を証明し続けた、他人の価値観など他人の意見であり、有名な大学教授の心理学的観点ですら、あまりにもお粗末であり、自己中心的態度だったりする事もあるだろう。


そもそも、統計的なデータを使って他人を判断しても、そこには認識、認知のずれはどうしても生まれてしまう、狂暴の由縁、根源、起源は人それぞれ違う事がある。


童貞にとっては、それはファミコンのソフトを一つ欲した事であった。


今では、ジーコサッカーを上書きしたエロいファミコンのソフトを集めるのにも務めるようになった。だが、それだけの事で、世界はここまで狂ってしまうのだった。

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