第10話 6年生①
6年生①
15時ごろに学校が終わると、日直の人は(教員にも日直があるのだ)学校中の窓を閉める。
正直入りたての時は、反吐が出た。こんなの何分かかるんだよ(約30分です。)と、イラついていた。今では、当たり前の仕事として徹してるが何度やったとしても面倒なことには変わりない。絶対面倒とか考えちゃいけないゲームの様に、ただひたすら無になってやるのだ。
ま、そんな時ふと校庭を見ると、家に帰ってランドセルだけ置いて、すぐに校庭に戻ってきてたりするわけだ。
その子は、6年男子の野球少年。
ただ、ひたすら一人で壁打ちを始める。
綺麗なフォームで、ただひたすらに。
投げて、
投げて、
投げて。
毎日来ているのかはわからないけれど、
これまでに何度となく見かけた。
その少年を見ると、私は何だか嬉しくなる。
ああ、今日もやってる。
私も小学生の時は、毎日打ち込んだことがあったっけな。
サッカーのリフティングの練習や、縄跳び。
あの頃は、それが何の助けになるとか、健康のためだ、なんて考えなかったから、とにかく上手くなるためしか考えなかったっけ。今は何をするにも、筋肉が落ちた体に鞭を打ち、少しでも動いたら偉かったなんて自分を褒めて終えると言うのに、いつからこんな大人になってしまったのだろう。
私は何かのために頑張るんじゃなくて、ただひたすらに楽しみを感じる術を探しているのだと、気づくのだった。
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