第5話

昼食を取り終えると、舞が口を開いた。

「ごめん茜、ちょっと準備室行かなきゃだから行ってくるね。」

「オッケー、さき教室戻ってるねー!」


舞と別れ、教室に向かって歩き出す。

「何浮かれてんだよ。」

食堂を出たところで、瑞希と偶然出くわした。

「別に浮かれてなんか…!」

「嘘つく時耳触る癖。相変わらずだな。」

「っ…」

さすがは幼馴染。茜の癖は、全てお見通しだ。

「なんかいい事あった?」

瑞希は右の口角をきゅっとあげ、茜の顔を見つめる。

「…優斗くん。この学校の生徒だったみたい。」

茜は両方の手をきゅっと握り、俯く。

(速水、びっくりするかな…)

「 あー、その事か。」

「えっ?速水知ってたの?!」

意外にも、瑞希の反応は冷静なものだった。

「知ってるも何も有名人じゃん、あいつ。

まあ、まだ顔見てねえけど。」

「なんで教えてくれなかったの!?」

「教えるも何も、みんなの憧れ九条センパイじゃん。お前が疎すぎるだけだろ。」

瑞希はかがみ込んで、茜の顔を真っ直ぐ見つめた。

「何、やっぱりまだ好きなの?あいつのこと。」

鋭い眼差しに、身動きが取れなくなる。

「っ…!関係ないでしょ、あんたには!」

その空気に耐えきれず、茜は走って教室へと戻って行った。


瑞希は はぁ、とため息をつき、自分の頭をクシャッと掴む。

「関係、大ありだっつーの。」

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思えば思わるる @hihi_yone

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