第3話

4限の終業を告げるチャイムが鳴ると、舞と茜は食堂へ向かった。

「今日も混んでるかなー。食堂、広いのにすぐ席埋まっちゃうよね。」

舞がぷくっと頬を膨らませる。

「そうだねー。今日の日替わり定食なんだっけ?」

茜は舞と談笑しながら歩いていた。

と、その時。

ドンッ

「いたっ!」

前から歩いてきた人物に、ぶつかってしまった。

彼の持っているプリントがひらひらと風に舞い、廊下にばらまかれてしまった。

「あ、すいません、前見てなくて――」

茜は慌てて床に落ちてしまったプリントをかき集める。

「ごめんごめん、僕も前見てなかったから。」

聞き覚えのある、どこか懐かしい声がする。

「えっ・・・」

ぱっと顔を上げると、その声の主は優しく微笑む。

「怪我はない?大丈夫?」

黒縁の眼鏡から覗く、ぱっちりとした二重の優しい目元。目じりにある泣きぼくろ。

すっと通った鼻筋に、薄い唇。風に揺れるこげ茶色の髪の毛。

「優斗、くん――?」

忘れるはずも、間違えるはずもない。何年も想い続けた彼の姿だった。

「えっ、茜ちゃん?この高校だったんだね。」

優斗は驚いた表情で茜をまっすぐに見つめた。

「プリントありがとう。もう学校は慣れた?」

「うん!優斗くん、いつ戻ってきたの?」

茜は立ち上がり、拾い集めたプリントを優斗に渡した。

「高校入学と同時にね。久しぶりだね、一瞬誰だか分らなかったよ」

「え、それどういう意味?」

「きれいになったね、ってこと」

茜は目を大きく見開き、頬を真っ赤に染めた。

「じゃ、僕これ職員室に持ってかなきゃだから。拾ってくれてありがとう。」

「あっ―――」

茜が引き留めようとするも、優斗はそのまま職員室に向かってしまった。

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