『今日から魔界の中学生!』(3)

その日は、魔王と真菜の挨拶だけで終礼となった。

今日は誰とも話せなかった…いや、話せる雰囲気ではない。

これが、今日から通う学校なのか……。

そんな事を思いながら学校の校門から出た、その瞬間。


「きゃっ……冷たっ!!」


真菜は突然、激しく打ち付けるシャワーのような水を頭上から受けた。

立ち止まって見回してみると、その正体は単純に雨だった。


(え!?今、晴れてたのに……!?)


まるで、校門から学校の外へ出た瞬間に降り出したかのようだ。

校舎に戻ろうかと、真菜がヨロヨロと後退った瞬間。

真菜のすぐ後ろを歩いていたらしい男子生徒が、真菜の手首を掴んだ。


「真菜、こっちへ来い!!」

「きゃっ!?」


手首を引っ張られて、真菜の体は校門の内側へと引き戻された。


「えっ!?あれ……雨が!?」


頭上から受けていた水が、ピタリと止まった。

校門の内側に入った途端に雨が止んだのだ。

いや、そうではない。

真菜が学校側から門の外を眺めると、校門の外では雨が降っている。

校門を境にして、外側は雨。内側は晴れ。天気が二分割されている。


「何これ?雨雲って、こんなにハッキリと境界があるの?」


真菜が呆然とつぶやくと、先ほどの男子生徒がその答えを口にした。


「それは違うぜ。こっち側が魔界、あっち側が人間界だ」

「はぁ!?」


訳の分からない事を言われて、真菜は変な声を出して男子の方を向いた。

褐色肌に紫の髪。特徴的な外見なので見覚えがある。


「もしかして…同じクラスにいた……?」

「うん!!オレの名前はコランだ!よろしくな!!」

「コランダ?変わった名前……」

「ちがう!!コラン!コラン!!コーラーン!!」


コランと名乗った男子はムキになって自分の名前を連呼する。

よく見ると、コランは赤い瞳。

見れば見るほど、あの魔王先生とそっくりだ。

でも、あの威圧的な笑いを浮かべる魔王と比べると、コランの笑顔は明るく純粋で無邪気だ。

口調も少年っぽいというか、幼いというか。

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