『今日から魔界の中学生!』(2)

この教室に入った瞬間に、何かおかしいとは思った。


みんな同じ制服を着てはいるものの、髪の色がバラバラだ。

金だったり銀だったり紫だったり…染めている?

校則は大丈夫なのだろうか。


そして誰を見ても、肌の色は小麦色。いや、褐色肌だ。

まだ春なのに、こんなに日焼けしたのだろうか…?

真菜だけが色白の肌で、浮いてしまっている。


一人だけ、別の存在が紛れ込んでしまったかのような違和感。

その時、自称『魔王サマ』が、教室の中央あたりの席に座る真菜に目を合わせた。


「転入生・真菜!!命令だ、前へ出ろ!!」

「はっ、ひゃいっ!?」


真菜は突然の名指しに驚いた勢いで、ガタっと大きな音を立てて立ち上がった。

震える足を進めながら、真菜は教壇へと上がる。


側で見ると、魔王は褐色肌に紫の髪、そして赤い瞳。カラコンだろうか?

ワイシャツのボタンをいくつか外し、ネクタイを緩く巻いている。

年齢は20代前半くらいに見えるが、教師にしては不良っぽい。


「真菜は、このクラスで唯一の人間だ。テメエら、仲良くしてやれよ!!」


魔王は真菜の肩に手を置き、クラス全員に向かって言う。

唯一の人間って、どういう事だろう…?

真菜は疑問に思ったが、なんだか逆らわない方が良い気がした。


「真菜、自己紹介をしろ」

「えっ!?は、 春野はるの 真菜まなです、よろしくお願いします……」

「ついでだ、何か芸をしろ。得意魔法でもいいぞ」

「……使えません……」


魔王とか、魔法とか…どこまで、この設定に合わせたら良いのだろう?

早く誰か、冗談だと言ってほしい……。

20人くらいの生徒たちの前で、真菜は遠い目をして助けを求めた。


「そんなんじゃ、立派な悪魔になれねえぞ」


「……立派な人間になりたいです……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る