トラックトラッシュ!

コトプロス

第1話 埋め立て地から続く道



さむい………やってらんねぇ…………


でもなぁ………蓄えももう少ないしなぁ


ううむ、…………あーダルいなぁ………




ゴミ捨て場となっている埋め立て地、その中に住んでいる俺は擦りきれた毛布を被り悩んでいる。


こないだ来たのが5日前だからなぁ、いつもなら昨日には来てるはずなんだけどなぁ………


俺はじっと毛布の中で耳を澄ませている…………来た!


遠くからかすかにエンジン音が聞こえる。

今日のお宝は何があるのか!こうしちゃいられねぇ!


「来たぞッ!」


あちこちから歓声があがり、そこかしこのゴミの影から何人もの人が顔を出して集まって来た。


俺は近くのコンテナの上に上り、車が走って来るであろう道を凝視する。……………ん?いつもの大型ダンプの音じゃない?


すぐに車が見えてくるが、それは見慣れたゴミ集積会社のダンプではなくオンボロの軽自動車に銃座を取り付けた旧式のビークルだった。一瞬で周りのクソ野郎共が引っ込む。


「あー!そこの人!そこのコンテナの上に居る人っー!」


クソッ!出遅れた!


「ちょ~っとヘマして都市警備隊に追っかけられてんの!アンタ助けてくれない?!」


厄介事だ。ここじゃ珍しくも無い。何かをやらかして行き場の無くした奴らがときどきこうやって迷い込んで来る。俺は急いでコンテナから飛び降り、始めに居たガラクタ小屋の中に身を隠す


「あ!今目をそらした!聞こえてんじゃん!逃げないでよー!」


車を爆走させていた女はコンテナの前で車を止めてあろう事か我が家に入って来た。


「あ!居た居た。遠目にアンタが見えたんだよね。アンタ、スクラッパーでしょ?この辺を荒らされたく無かったら私を助けなさい!」


女は中肉中背、特別出っ張った所も無く、顔はそばかすと眼鏡のいかにも田舎娘と言う感じの出で立ちでガンマンの様な格好をしていた。何て言うんだっけ、カウガール?


「で、早く名乗りなさいよ。あ、変な気を起こさないでよ?こっちには銃があるんだからね!変な気を起こさないでよ!」


「チッ……………名乗るならまず自分から、だろ。まあいい、俺はガベッジ。生まれも育ちもこのありがた~い恵みの山さ。厄介事が何の用だよ」


「私はシルクっての。厄介事じゃないわ!で、都市警備隊に追っかけられてるから匿ってくんない?」


「勝手にしろ。このゴミ山でホームレスしてる連中が、んな余裕あると思うか?」


「私だって緊急事態じゃなきゃホームレスなんかを頼ったりしないわよ!」


どうだか、体の良い弾除けみっけ!ぐらいなモンだろ。


「じゃあちょっとお休み。私クタクタなのよ。無いよりマシだしこのきったない毛布借りるわよ」


「おい、せめて表の車をどっか見えない所に…………ってもう寝てやがる」



ーーーーーーーーー




「おうおやっさん流石早いな」


「おう、ベッジ!いつから女を連れ込む様になったんだ?」


「バカ言え、見てただろ。ありゃ形だけ真似たどっかの箱入り娘って所じゃないか?家出とかはよくある厄介事じゃないか」


「ガハハ!箱入り娘か!ちげぇねぇ!車は出しっぱなし、寝床には何も仕掛け無い。オマケに上着を脱いで寝てやがるぜ」


おやっさんはここらのゴミ山のまとめ役のハゲたオッサンだ。何故かロクなモン食えない環境でありながら、ムッキムキの肉体美を寒空の下に晒していた。すでにシルクの車は住人と共にバラバラにしていた。もうエンジンまで剥がれてシャーシとボディだけになっている。


「相変わらず見事な手際で、であのシルクってのどうします?」


「まあ、彼女のセリフが本当なら都市警備隊に追われてる。だったか。小娘一人にあそこの市長が警備隊を動かすとは思えん。どうせコトを大きく見せようとするホラだろ。ほっとけ」


「ですね。流石に身ぐるみ剥ぐのは可哀想だしあのまま寝かせておいてやりますか。」




ーーーーーーーーーーー





しばらくして………



「おい!ゴミども!ここに女が来なかったか!庇うと貴様らも打つぞ!」


青い制服を着た3人組と警官仕様のワークマシンが俺の家の前で銃を構えている。あの銃は……まあ良い。


「ええ、警官どの。自分達がアンタらに逆らっても何になるってんですかい。だけど、知りませんな。この辺に来るのはゴミを満載にしたダンプか浮浪者ぐらいのモンですぜ。女なんざこの2~3年ババアしか見てませんよ」


「本当だな?一応その汚い犬小屋も調べる。おい」


3人組のうちの一人が俺のあばら屋に入る。頼む………上手くやり過ごし「きゃーーー!」「隊長居ました!」


瞬間、警官が銃口をこちらに向ける。


ダダダダダ!


奴ら!警告無しかよ!

俺は咄嗟にポケットのスパナを右の警官に投げつけてゴミの影に隠れる。


「警流石傭兵あがりだ!野蛮さが隠しきれて無いぜ!」


「殺せ!女はまだか!」


「ハッ!確保しました!」


我が家を見ると警官がシルクに銃を突き付けて居た。本当なにしたんだろうな?


「おい、シルクっつったか?なにしたんだよ!」


「それは!「だまれ!」いやっ!助けて!」


「ハハハ!助けてだと?お前を連行した後はここのゴミ掃除だ!ちょっとはスッキリするだろうぜ!」


後ろに控えるワークマシンがあばら屋をスクラップにしていく。


どうするかと思っていたらゴミの影からおやっさんが手招きしていた。


「おい、これはもうヤバいだろ。あいつらやっちまえよ!」


「気が進まないけど、しょうがない。」


俺は急いでゴミ山の隠しガレージに飛び込むと継ぎ接ぎのワークマシンに火を入れる。


「本当は戦うよりゴミを片付ける為のマシンなのにな。行くぜ相棒!」



ドガシャアアン!とゴミ山を突き破り警官の乗るワークマシンにゴミを投げつける!


「なっ!ホームレスどもがワークマシンを?!だが、そんなツギハギのマシン、すぐにスクラップにしてやるぜ!」


ババババババ!と辺りに銃弾を撒き散らす!


俺はコンテナの扉を盾代わりに構えて突撃する!


「パワーだけならっ!」


「なめるなッ!野良犬がっ!」


警官のワークマシンのスネが開いて榴弾が飛び出す!


激震が走り、俺のワークマシンは盾を持っていた右腕ごとなくなっていた。


「あっ!てめえ!これ組むのにどんだけかかったと思ってる?許さねぇ!」


啖呵を切ったものの、ほとんどスクラップな俺のマシンは立っているのもやっと、どうするか………


「使って!」


捕まっていたシルクが警官の拘束が緩んだ瞬間にカバンから何かを投げる。


「なんだ?このカプセルをどうすれば良い!」


「マシンにぶちこむのよ!」


「オイッ!黙らせろ!」


「コネクタは……コレか、どうなるかは知らんがどうせ寄せ集め、出た所勝負!」


ゴウン!とカプセルが唸るとドロリと溶けて無くなった右腕に集まると、周囲のスクラップを巻き込み巨大な腕を形成した!


「なんだそりゃあ!なんてワークマシンだ!」


「このワークマシンはおやっさんのオリジナル!スクラップってんだ!覚えとけ!」


溶けたカプセルの銀色がツナギとなって出来た巨腕を握りしめる!


「よくも我が家をぶち壊しやがって!このおっ!」


警官のワークマシンを殴り飛ばした後、シルクを拘束している警官に拳を向ける。


「アンタ達、その娘を置いて帰るんだな!」


「くっ…………退却だ!あの人に知らせろ!」


「バ~カ!おととい来やがれってのよ!」






ーーーーーーーーーーーー



「すまんな」


「良いさ。どうせ行くつもりだったんだし、ちょっと早くなっただけさ」


「ちょっとアンタ!早く動かしなさい!」


「はいはいお嬢様、じゃ、おやっさん、行ってきます。」


「おう。帰ってくんじゃねぇぞ!」



俺はヤバそうなカプセルを持っていたシルクを連れて旅に出る。当面の目的は、スクラップをもうちょっとまともに見える様にする事かな。












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トラックトラッシュ! コトプロス @okokok838

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