2話 サウスバレーとタクシー

ドミニカ国の世界遺産、モルヌ・トロワ・ピトン国立公園。ルトラは2009年、2016年2度に渡りトロワ・ピトン山に調査隊、火山学者として参加した。

その後、研究を国際火山学会に火山活動について論文を発表した。火山学者としてはかなりの重宝した研究内容だった。さらにルトラは論文を出した時、感嘆符を多く使った事により「感嘆符の男」としても有名になっていた。



──────── 1ヶ月後、サウスバレー


アルバカーキ国際空港、そこにトマス家の長男シーミアは手荷物検査で引っかかっていた。


ピーッ! と音がなる。


何でだよ!


と、少しシーミアはイラつく。


なにか付けてないですか? ベルト、アンクレット、時計。


などと検査員の男性はシーミアに聞く。


アンクレット? 男が? 時計は革ベルトだ。ベルトも革製だ。


手を広げて。


そう言われ、シーミアは手を挙げて検査をする。


いいぞ、通れ。


検査員からやっとお許しがでる。


あなたなんでそんなに時間かかるの?


と、母のレノが聞く。


おれは鉄分が多いのかもね。


そう言うと、2人は空港をでる。レノは少し大きめな手提げカバンを持っている。シーミアは特になにも持ってなかった。コートの内ポケットに財布とパスポートぐらいだった。


ちなみに今は母のレノとシーミアだけ。ほかの隊員は3日前に旅たった。実は2人は先にサンディア大学の都合でアルバカーキに向かった。父のルトラはサンディア大学の教授に会うため早く、娘であるタミアは大学の入学と卓球部に合わせて早めにルトラと出発した。


残った母レノはシーミアを連れ、後日アルバカーキに。そのままサウスバレーの家へと向かうことにした。シーミアは明日から高校が始まる。


アルバカーキ国際空港から家まではそんな遠くない。

あるいて20分ほど。キャリーもあるので、タクシーを使った。


タクシーに乗ると、男性の運転手が話しかけてきた。


ねえ、あなたもうしかしてあの女優のレノ・アキーナス・トマス?


そうですが、なにか?


いや〜! 大ファンなんですよ! 後でサインしてください。


いいですよ? どこに?


そうですね、コインケースでどうでしょ? 目的地ついたらでいいです。


わかった、コインケースね。


君はすると、息子さんかな?


そうだよ。


そういえば、噂は本当だったんですね。トリニダード・トバゴからアメリカに移住してくるって噂。


ええ…… まあ、そうね…… 。


あの映画好きですよ、マークの冒険! トラが出てくる。なんでしたっけ? あのタイガー?


ホワイトタイガー?


そうそう! あれかっこいいですよね。


あの、もう着きますか?


ええ、あと5分ですかね。


5分ですか…… 。


よくしゃべる運転手に気負いしてしまい、ため息を着く。それもそうだ、5時間の旅だったし、機内にいた変爺さん2人組の声であまり寝れなかったので、疲れている。早く家に着かないかと、内心思っていた。

帰ったら帰ったで荷解きもきっとある。ルトラはサンディア大学に行くのでまだ荷解きは全て終わってないと言っていた。家に着いたら今日は少し休もうと考えていた。


色々考えている間に、家の前につく。


さあ! お客さん着いたよ!


あ、ありがとうございます。


さて、先にサインいいですか?


あ、ちょっと待ってください。シーミア、鍵を渡すから先にキャリー取って、入っててくれる?


ああ、わかった。


シーミアは鍵を受け取ると、タクシーを降りる。荷台からキャリーを取り出し、家の方へと向かって行くのが見えた。


さて、運転手さん。実は今サインペンを持ち合わせてないの。ごめんなさい。


いや! 大丈夫ですよ! 私、持っているので!


え、ならよかったわ。


そう言うと運転手はサインペンとコインケースをレノに渡す。


ありがとう。


レノはコインケースにサインを描いた。


これでどうかしら?


世界に一つしかないコインケース、ありがとう!


そして、レノはやっとタクシーを降りることが出来た。

今日も疲れた、なんて思いながら重い手提げカバンを持って家に入った。家は一軒家のような木製のレトロな家だ。当然、扉も木製で、ホワイトカラーだ。凄いオシャレな家。よく、海辺にありそうな家だ。


女優もオチオチ外へ出られない。レノはこの先が楽しみと嫌な気持ち半々だった。


家に入ると、2人は疲れていたのか荷解きはせずに、リビングのテーブルで、ココアを飲んで落ち着いた。

荷解きは落ち着いてからする事にしたのだ。

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