第百六十五話 目標は100、足を踏み入れる

「まぁなんにせよ、怪しい人から物を受け取らない事! だね! しつこいようだけど、2人とも気を付けてね! 叔父さん仕事行ってくるからね!」


 そう言って叔父さんはいつものように外に出た。

 受け取らない事……。


「なぁシェダル」


「なんだ?」


「付けられた時に抵抗したら……自らの意思で腕輪を外すとかありえるかな?」


「うーん……難しいだろうな、前にも言ったが、あの腕輪を付けられると自然と感情が高ぶってしまう」


 それなんだよなぁ……。

 何かの拍子でそれが抑えられたりしないものだろうか?

 何かの拍子……。


『お前は真面目で、仕事熱心で、凄い奴だ、社会を守ることなんて、そんな変なものを使わなくてもできる!』


 ……そういえば。


「商店が襲われた事件で……ラーメン屋の店主さんが、ヒューモンスターに変身してた人を説得しようとして、上手く行きかけたことがあったな」


「ほう、私はあの時途中で奴を蹴り飛ばしていたが、そんなことがあったのか」


 よくよく考えたら、あの時シェダルはいなかったな。


「もしかすると……」


「……親しい間柄なら成功する可能性があるかもな」


 親しい間柄……俺の場合は叔父さんかシェダルかな?


「まぁ、そんなこんなで、今日も学校は休校だろう? ダンジョンでも行こう! 新たなヒューモンスターと戦うためにも、まずは修行だ!」


「お、おう!」


「さぁ、そうと決まればさっさと飯を食おう!」


 俺たちは飯を食って、準備をすることにした。



「よし! 到着!」


 歯を磨いて、酔い止め薬を飲んで、気合十分だ。


「まずはステータス確認だ!」


「おう! ステータスオープン!」


------


金剛 昇


NOBORU KONGO




国籍 日本国


スキル 鍵


レベル 92




在籍 県立祇園高等学校


所属 冒険者ギルド


------


 92……目標は100にするか。

 それにしてもあっという間にこのレベルまで来たか。

 なんだろう……実感がない。

 これも腕輪のおかげだ。


「昇! すごいな! もうすぐ100だぞ!」


「あ、あぁ……」


「お前、男に近づいたな!」


「男に……?」


「あぁ! すごいぞ!」


 シェダルは笑顔で俺の頭を撫でた。

 ……嬉しい。


「よし! 今日は第14階層まで行こう!」


「……あぁ!」


 俺は男に近づいたことに歓喜しつつ、神殿から出た……シェダルの後を追って。

 俺は行くぞ! このまま最終回層まで行ける気がする!

 燃えてきた!!



「おい昇! 早く来い!」


「ちょ、ちょっと待って……」


 ……燃え尽きた。

 めちゃくちゃ疲れる……ヒューモンスターの事件のせいでダンジョンに入るとかなり辛く感じる。

 例によって9階層はめちゃくちゃ暑いし、モンスターも強い……ここから10階層は大丈夫なのだろうか?


「よし! 前回までの道まで着いたな!」


「おう……」


 俺たちは第10階層の入り口まで着いた。

 俺は息切れ状態……。


「おい! こんな所でへばってたら先で死ぬぞ!」


「わ、わかってるよ!」


 えぇい! シェダルにこんな姿いつまでも見せてられるか!

 俺は男になるんだ! シェダルに認めてもらうために!


「よし! いざ第10階層へ!」


 俺たちは未知の空間へと足を踏み入れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る