閑話 弓使いの過去 その3 ☆悠里視点

 それからまもなくして、中学校に上がった。


 パパの事が嫌いになり、ママともあまり口を利かなくなったウチは……自然と悪い友達と付き合うようになった。

 でも、心の奥底では、パパやママの事が心配でしょうがなくて……何をどうするべきか分からなかったんだと思う。


 で、ある時……ウチはその悪い友達からも嫌われ始めた。


 理由は簡単、心の奥底で残っていた正義感で、悪い友達が攻撃対象にしていた子を庇ったから。


 それで……ウチは孤独になった。

 心のよりどころが欲しかった、ウチの事を理解してくれる人が欲しかった。


 そうだ、パパやママを守れるような力を手にすれば、認めてくれるかもしれない。

 ウチはスポーツに打ち込んでみることにした。

 初めは弓スキルだったので、弓道部に入ろうと思ったけど……なんかダサい気がしたのと、これでは体力作りにならないだろうと考えて、違う部活にしようと思った。

 そこで目を付けたのは……陸上部だった。

 ここなら、スタミナを鍛えられるし、脚力も腕力も鍛えられる、そう考えて入った。


 そこで……ウチは翔琉と愁に出会った。

 話を聞くと、2人とも孤独だった。

 翔琉は家に居場所がなくて、愁は両親共働きで、翔琉と出会うまでは友達がいなかった。


 ウチらはすぐに意気投合した。

 そこからは毎日が楽しくなった。


 休み時間中、悪い友達……この場合は元友達か、元友達に嫌がらせを受けても、翔琉と愁が守ってくれた。


 愁は……あんまり頼りなかったけど、少なくとも、ウチの事を友達だと認めてくれた。


 一緒に走り合って、笑い合って……次第に、ウチは翔琉のことが好きになってきた。

 こんな感情になるのは生れて初めてだった……でも、伝えたとしても拒否られたらどうしよう……ウチとはもう会わなくなるかも……また……一人になっちゃうかも……。

 どうすればいいかわからなくなって、ウチは愁に相談した。

 愁は快く聞いてくれて嬉しかった。


「……なんだよ、そんなことかよ」


「……え?」


 愁はまるで些細な問題かのように言い放った。


「その程度で会わなくなるなんて、くだらねぇよ」


「……」


「別にそれはよ……お前の気持ちなんだろ? なら伝えりゃいいだろ、別に死ぬわけじゃないんだし」


「……そっか、そうだよね!」


 愁に背中を押されたウチは……思い切って行動に移した。

 そして……翔琉は受け入れてくれた、愁もウチらを祝福してくれた。


 ……最高の瞬間、忘れらない一日だった。



 ……ある時、翔琉は県立の高校を受けたいと話した。

 ウチと愁は焦り始めた、ウチは翔琉と愁がいなくなって、また孤独になるのが嫌だった。


 ウチと愁は、翔琉のサポートの上で、勉強を始めた。

 その頃のウチと愁は、学業成績は下から数えた方が早くて、先生も「お前らはもうちょっと下の高校を受けたほうが良い」と言ってきた。

 ウチらは頭にきて、必死に勉強した。

 そして……翔琉と同じ、県立祇園高校に合格した。

 ウチと愁は飛び上がるほどに喜んだ。


 そして……ダンジョン探索の授業で、昇くんと薫ちゃんという新しい友達もできた。

 ウチは……今人生で最高の時を過ごしていた。

 ……でも、ヒューモンスターどもはそれをぶち壊そうとしている。

 ウチは負けない、友達を守るために、そして……パパに認めてもらうために。


 戦ってやる、最後まで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る