閑話 弓使いの過去 その2 ☆悠里視点

『速報です! 本日未明、太平洋に謎の大陸が出現したとの情報が入ってきました! この大陸からは人工的な灯りが見えていたり、文明的な建築物が見えているとのことです!』


 喫茶店のラジオでこんなことをやっていて、ウチとママ、そしてお客さんはそれに釘付けになった。

 ウチは当時、怖くてママにしがみついていた。


『この大陸は、日本列島からそれほど遠くない場所に出現しており、太平洋側から肉眼で見えるとの情報が入ってきています! また、謎の大陸と同時に、謎の洞窟が世界各地に出現しており、日本にも大阪市などに出現していると情報が入っています。防衛省は、謎の洞窟に自衛隊を派遣し、有事に備え、自衛隊に警戒態勢を敷くことを検討していると発表しました、付近の皆様は、命を守る行動を優先してください!』


 自衛隊……警戒態勢……ウチらはどうなってしまうのだろうか?

 お客さんにママ、そしてウチはあまりの出来事に何も言えなかった

 ……自衛隊という言葉を聞き、ウチは唐突にパパの事を思い出した。


『悠里! 大丈夫か?』


『悠里……お父さん、頑張ったよ……』


 あの時の傷ついたパパを思い出して、私は外に飛び出した。


「ちょっと悠里! 待ちなさい!」


 ママの声が聞こえた気がしたけど、当時のウチはその言葉をスルーした……スルーせざるを得なかったと言った方が正しいのかな。

 パパを守らなきゃ、パパを助けなきゃ。

 そう思って飛び出して、私は走り続けた。

 全身汗まみれになっても、パパのいるところまで走ろうと思った。

 ……でも、途中で転んで、走れなくなった。

 足を怪我してしまい、歩くのも困難な状態になった。


「……パパ」


 ……私はその場で泣き崩れた。



「悠里! ダメじゃないか!」


「……ごめんなさい」


 ウトピアの出現騒動が収まって、数日たち、パパが帰ってきた。

 帰って来るや否や、足の怪我の件でパパに叱られた。

 この時は叱られて当然と思った。


「貴方、悠里は貴方の事を心配して……」


「そうだとしても! 危険な状況下で外に出るのは良くない! 俺の事は別に気にしなくていいんだ!」


「ちょっと貴方……」


 ……気にしなくていい?

 ウチはその言葉を聞いた瞬間……我を忘れて大声を出した。


「気にしなくていいってなんなの!? 人が心配しているのにその言い方はないでしょ!?」


 怒りを露わにしたウチに対し、パパは動揺していた……けれど、すぐに言い返された。


「……悠里! お父さんはお前らを……国を守るのが仕事だ! 別に俺がどうなろうと……」


「……またそれ?」


 ウチは……怒っているのか、悲しんでいるのか……感情がぐちゃぐちゃになってしまった。


「もうパパなんて知らない!」


「ちょっと悠里!」


 ウチは自分の部屋に閉じこもって……大きな声で泣いた。

 ……その日以降、パパとはあまり口を利かなくなった。

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