閑話 弓使いの過去 その1 ☆悠里視点
「それじゃあ、またな、悠里」
「……うん」
翔琉は悠里を喫茶店まで送った。
悠里は未だ、元気が無い状態だった。
「……ごめん、翔琉。気を遣わせちゃって」
「いいって! それよりも、今は体を休めよう、な? 変身して疲れ溜まってるだろ?」
「……翔琉の方が疲れてるでしょ?」
「ま、まぁな!」
悠里は翔琉と話をすると、若干元気を取り戻したのか、笑みを浮かべた。
「じゃあな!」
「うん! 翔琉も道中気を付けてね!」
「おうよ!」
翔琉は手を振り、バギーを走らせた。
悠里は喫茶店に入り、帰宅したことを中にいる母親に言った。
悠里は店のカウンターに座り、父親の事を考え始めた。
『悠里! 大丈夫か?』
『悠里……お父さん、頑張ったよ……』
「……パパ」
悠里は過去の事を思い出し……涙を浮かべた。
◇
物心ついた時から、パパの顔をあまり見ていない。
理由はパパが国を守る仕事に就いているからだった。
そのことを知ったのは小学校の頃、ママに聞かされた。
「パパはね、私たちを守るための仕事に就いているんだよ」
「そうなの!? パパ、かっこいい!」
……そう、最初、ウチはパパの事をカッコいいと思っていた。
ウチらを守るために、毎日戦っている、だから、たまにしか帰ってこなくても、何とも思わなかった。
「ただいまー! 悠里! 帰ったよ!」
「パパ! おかえり!」
パパが帰ってくる日は、飛び上がるほど嬉しかった。
パパが帰ってくると、必ず家族でどこかに出かけた。
◇
……その日、ウチらはショッピングモールに出掛けた。
パパはその日、私の為にオシャレなバッグを買ってくれた。
すごく嬉しかった、大人になった気がした。
「どうだ? 悠里、気に入った?」
「うん! パパありがとう!」
買い物を終え、これからレストランで食事をしようと歩き出した……その時、悲鳴が奥の方から聞こえた。
悲鳴の先を見ると、人々が手で体の一部を抑えていた。
よく目を凝らしてみると、刃物を持った男が、こちらに向かって走ってきていたのだった。
ウチは怖くなって、思わず叫んだ。
すると、その叫び声を聞いて気が立ったのか、刃物を持った男がウチに向かってきた。
このままじゃ死んじゃう……と思ったその時。
「ぐはぁ……」
パパが体を張ってウチを守った。
パパの腕に刃物が刺さっていて、そのままパパは男に回し蹴りをした。
男は倒れ、周りにいた警備員が男を取り押さえた。
ウチはパパの腕に刺さった刃物を凝視した。
凄く痛そうだった、凄く苦しそうだった。
ママもパパに駆け寄って、呼びかけた。
……パパは笑顔のまま、片手で私の頭を撫でた。
「悠里……お父さん、頑張ったよ……」
「……パパ!」
パパはそのまま、目を閉じた。
……最初は死んじゃったと思った、でもその後救急車に運ばれて、奇跡的に軽傷で済んだらしい。
その後、パパは警察から表彰された……らしい。
ウチはこれ以降、傷口やグロい物が苦手になった。
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