第百六十三話 得た信用、俺もそうしよう

 ……ここは俺も言おう。


「俺も……翔琉と同意見です、信じてください」


「私からもお願いします」


 シェダルも頭を下げてお願いをした。

 ……悠里のお父さんに届くのだろうか?


「……翔琉くんが言うなら、信じてあげよう」


「ありがとうございます」


 翔琉が頭を下げたのと同時に、俺たちも同じようにする。

 ……よし、納得してくれたようだ。


「ただし、翔琉くん」


「はい」


「……悠里を、守ってあげてくれ」


「……はい!」


 悠里のお父さんは、翔琉の肩を叩いて……基地の中に戻っていった。

 これで一件落着……なのか?


「さて! 後は俺たちに任せて、お前らは体を休めててくれ!」


「何かあったら連絡するね」


「ありがとうございます、剣さん、春香さん」


 俺たちは礼を言って、基地の外を出た。

 ふぅ……一応悠里の家族には公認に……なったのかな?



 剣さんたちに後を託した俺たちは、とりあえず一旦は解散しようという話になり、出口へと足を運ぶ。

 悠里は基地に門に寄りかかって待っていた。


「……パパ、なんか言ってた?」


 悠里は機嫌が悪そうに聞いてくる。

 ……なんか怖いな。


「あぁ、俺たちが事情を説明したら納得してくれたよ」


「……そう」


 いつものテンションが高い悠里と違うので、なんだか不安になる。

 翔琉は悠里を宥めつつエスコートし、バギーに乗せた。


「それじゃ、またなんかあったら連絡頼む」


「おう!」


「気を付けて帰れよ!」


「昇とシェダルちゃんも、気を付けて!」


 翔琉は手を振って、バギーを走らせた。

 悠里は終始下を向いていた……大丈夫かな、悠里。


『何でそういう話になったのかは分からないけど……ウチは昇くんが昇くんらしくしていればいいと思うよ! そのうちそういうのは分かるって!』


『それにウチらまだ高校生でしょ? まだそういうのなんて分かるわけないじゃん! でしょ?』


 ……悠里に言われたことをふと思い出す。

 俺らしく……か。

 悠里はああ言ってくれたけど……俺はやはり、シェダルに認められるような男になりたい。

 でも、悠里の言ったことにも一理ある……俺らしく、男になろうかな……。


「今日のお前、少し変だぞ」


「え?」


 考え事をしていると、シェダルがそう言った。


「何かあったのか? 言ってみろ」


「……」


 ……男らしさ、大人らしさを2人に聞きに行って、戦闘中も、そして今も、そのことを考えていただなんて、言えるわけがない。

 戦闘でも援護されっぱなしだったし……と言っても最後は決めたけどさ、翔琉と一緒にだけど。


「ほう、言わないつもりか」


「……」


 俺は何かを察し……両手を広げたシェダルを避けた。

 ……いつもの抱き癖だ。


「こんな所で抱くんじゃねぇよ!」


「なんだ? 好きな女に抱かれるのは嫌か?」


「嫌……じゃねぇけど、こんな所でやるなよ!」


「ほう? 戻ったらいいんだな?」


「……」


 シェダルはニヤニヤしながら俺をからかってくる

 こいつ、本当に……。


「だから子ども扱いすんなよ!」


「お前は子ども! 何度も言わせるな!」


「そうかよ!」


 俺は恥ずかしくなって、目線を逸らした。

 全く、大人ってなんだよ……。


「さて、冗談はここまでにして、私たちも帰ろう、昇」


「……あぁ」


 シェダルは転移スキルに変身した。

 それにしても悠里、大丈夫だろうか? ……お父さんの事で何かあるのかな?


「おい、昇! 早く入れ!」


「あ、すまん」


 転移ホールに入っている間、俺は悠里のテンションが気になって仕方がなかった。


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