第百六十三話 得た信用、俺もそうしよう
……ここは俺も言おう。
「俺も……翔琉と同意見です、信じてください」
「私からもお願いします」
シェダルも頭を下げてお願いをした。
……悠里のお父さんに届くのだろうか?
「……翔琉くんが言うなら、信じてあげよう」
「ありがとうございます」
翔琉が頭を下げたのと同時に、俺たちも同じようにする。
……よし、納得してくれたようだ。
「ただし、翔琉くん」
「はい」
「……悠里を、守ってあげてくれ」
「……はい!」
悠里のお父さんは、翔琉の肩を叩いて……基地の中に戻っていった。
これで一件落着……なのか?
「さて! 後は俺たちに任せて、お前らは体を休めててくれ!」
「何かあったら連絡するね」
「ありがとうございます、剣さん、春香さん」
俺たちは礼を言って、基地の外を出た。
ふぅ……一応悠里の家族には公認に……なったのかな?
◇
剣さんたちに後を託した俺たちは、とりあえず一旦は解散しようという話になり、出口へと足を運ぶ。
悠里は基地に門に寄りかかって待っていた。
「……パパ、なんか言ってた?」
悠里は機嫌が悪そうに聞いてくる。
……なんか怖いな。
「あぁ、俺たちが事情を説明したら納得してくれたよ」
「……そう」
いつものテンションが高い悠里と違うので、なんだか不安になる。
翔琉は悠里を宥めつつエスコートし、バギーに乗せた。
「それじゃ、またなんかあったら連絡頼む」
「おう!」
「気を付けて帰れよ!」
「昇とシェダルちゃんも、気を付けて!」
翔琉は手を振って、バギーを走らせた。
悠里は終始下を向いていた……大丈夫かな、悠里。
『何でそういう話になったのかは分からないけど……ウチは昇くんが昇くんらしくしていればいいと思うよ! そのうちそういうのは分かるって!』
『それにウチらまだ高校生でしょ? まだそういうのなんて分かるわけないじゃん! でしょ?』
……悠里に言われたことをふと思い出す。
俺らしく……か。
悠里はああ言ってくれたけど……俺はやはり、シェダルに認められるような男になりたい。
でも、悠里の言ったことにも一理ある……俺らしく、男になろうかな……。
「今日のお前、少し変だぞ」
「え?」
考え事をしていると、シェダルがそう言った。
「何かあったのか? 言ってみろ」
「……」
……男らしさ、大人らしさを2人に聞きに行って、戦闘中も、そして今も、そのことを考えていただなんて、言えるわけがない。
戦闘でも援護されっぱなしだったし……と言っても最後は決めたけどさ、翔琉と一緒にだけど。
「ほう、言わないつもりか」
「……」
俺は何かを察し……両手を広げたシェダルを避けた。
……いつもの抱き癖だ。
「こんな所で抱くんじゃねぇよ!」
「なんだ? 好きな女に抱かれるのは嫌か?」
「嫌……じゃねぇけど、こんな所でやるなよ!」
「ほう? 戻ったらいいんだな?」
「……」
シェダルはニヤニヤしながら俺をからかってくる
こいつ、本当に……。
「だから子ども扱いすんなよ!」
「お前は子ども! 何度も言わせるな!」
「そうかよ!」
俺は恥ずかしくなって、目線を逸らした。
全く、大人ってなんだよ……。
「さて、冗談はここまでにして、私たちも帰ろう、昇」
「……あぁ」
シェダルは転移スキルに変身した。
それにしても悠里、大丈夫だろうか? ……お父さんの事で何かあるのかな?
「おい、昇! 早く入れ!」
「あ、すまん」
転移ホールに入っている間、俺は悠里のテンションが気になって仕方がなかった。
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