第百六十一話 駆け寄る隊員、パパも隊員!?

「昇! この隙に決めるぞ!」


「あ、あぁ!」


 翔琉は携帯を外し、口元に近づけた。


「スキル必殺!」


『声紋認証!』


 俺は翔琉に同調し、鍵を回して必殺技の準備をした。


『スキル必殺!』


 剣に光が集まり、準備は万全だ。

 奴は未だに怯んでいた。

 この隙に一気に決めよう! 名誉挽回だ! 行くぜ!


『レッドセイヴァー! ファイヤーフィニッシュ!』


『剣スキル! 切り裂きすぎフィニッシュ!』


 俺たちは奴に向かって走った。

 赤い剣と金の剣が奴の体を切り裂き……モンスターの皮が剝がれた。

 中から出てきたのは……。


「……女性?」


 女性だった。


「……何はともあれ、止められたな、昇」


「あぁ」


 翔琉とハイタッチし、とりあえずは一件落着になったことを分かち合った。

 ……そんな中、先ほど退却した自衛隊員の皆さんがこちらへ戻ってきた。

 その中で、一人の男性隊員が女性に近づいてきた。


「おい! こんな所で何やってんだ!」


 隊員は女性に近づき、抱え込んだ。


「貴方……迎えに……」


「お前……」


 2人は面識があるようだった。

 とりあえず俺たちは変身解除し、隊員と女性に近づく。

 後ろにいたシェダルと悠里も、お互いに変身を解除し、こちらへ向かってきた。


「貴方……ここにいたら……危険が……」


「何言ってるんだ!」


 隊員は女性を抱きかかえている。

 この2人、まさか……。


「この2人は……夫婦?」


「それ以外に何に見えるんだよ?」


「……そうだよな」


 翔琉のツッコミに俺は納得した。

 女性の動機は一体何なんだろう? 迎え……危険……。


「ここにいたら……モンスター人間に……」


「何を言っているんだ! お前がそれになってたら……」


「貴方……」


 ……ん?


「なぁシェダル、これどういう事?」


「……わからない、私の推理では、ヒューモンスター騒動でこの国の軍隊が出動することが多くなり、隊員の家族がそれの不安に付け込まれて携帯を渡された……とかだろう」


「……もしそれだとしたら本末転倒じゃないか?」


「……だな」


 なるほどな、確かに、親族がヒューモンスター退治に追われていて、いつ死ぬかもわからない状況じゃ、こうなるのも仕方が無いか……。

 俺たちがそんな風に会話をしていると、他の隊員の一人が俺たちに近づいてきた。


「悠里! お前悠里か!?」


「……」


 向かった先は悠里だった。

 悠里はその隊員から目線を逸らしている……なんか嫌がってる?


「……パパ」


 ……パパ?


「なぁ、翔琉。この隊員の人ってまさか……」


「あぁ、悠里のお父さんだ」


「えぇ!?」


 なんと、悠里の父親は自衛隊員だった。

 でもなんだろう、悠里は凄く居心地が悪そうだ。


「悠里! お前なんでこんな所に……それにさっきの格好はなんだ!?」


 ……どうやら、グリーンアーチャーの姿を見られていたようだった。


「……パパには関係ないでしょ」


「関係あるよ! もしも俺がいない間に悠里が危険な目に合ったら……」


「うるさいなぁ……」


 悠里……お父さんの事嫌いなのか?


「悠里は……たまにしかお父さんと会わないんだ、だから恥ずかしがってるんだよ」


「へぇー……それにしてもあの態度はちょっとおかしい気もするけど……」


 翔琉は恥ずかしがっていると言っているが、あれは明らかに嫌悪感あるだろ……。

 たまにしか帰ってこないから嫌になっているのか?

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