第百十話 携帯を調整、ダンジョンで実験!

「やぁやぁお持たせ」


 シェダルがお盆の上に4人の携帯電話を乗せ、ようやっと戻ってきた。

 いやぁ辛かった、翔琉と悠里による2人のイチャイチャ話や俺とシェダルの関係について、そして仲良さげに会話する愁と薫。

 普段からかってくるシェダルが、救済の手を差し伸べる天使に見えた。


「調整って一体何をしたの?」


「別に変な細工はしていない、安心しろ」


「あ、いや、疑ってるわけじゃないんだよ!?」


 翔琉はシェダルの行動に少々疑心暗鬼になっているようだった。

 大丈夫だ、その態度が正しい。


「まぁここじゃあ狭いから外に出よう、時間大丈夫か?」


「おう! 皆もいいか?」


「もちろん!」


「お、おう……」


「……大丈夫……です」


 ……なんか愁と薫が残念そうな顔になった。

 なんか2人、この数分で距離縮まってない? そう見えるだけか?


「よし、では再びダンジョンに行こう! あぁゆっくり食べていいぞ」


 俺たちは残っていたアップルパイと紅茶の器を空にし、転移スキルでダンジョンへ向かった。



 おえぇぇ……そろそろ慣れなきゃいけないのは分かるが、やっぱ慣れないわこれ……

 さっき腹に入れた紅茶とアップルパイを戻しそうになったが、我慢した。


「昇……お前もしかして、酔いやすい?」


「あぁ……車とか電車乗るだけでももう……」


「お前……真剣に病院行った方がいいぞそれ……俺も昔乗り物酔い頻繁にしてたが、小学校高学年には回復してたぞ……」


「そうなのか……今度行くわ……」


 翔琉は本気で心配しているような顔だった。

 こいつの仲間思いには脱帽する、ほんとに。


「まぁそんな三半規管が小学生レベルのゲロ吐きは置いておいて、行くぞ!」


「ゲロ吐きとはなんだ! おえぇ……」


「ほら、吐くなら隅で吐け」


「大丈夫だっての!」


 シェダルが俺を抱えて隅へ誘導しようとしたが、その腕を振り払って、入口へ全力前進した。


「おい! 待たないか!」


「仲いいねぇ2人とも、会話の内容はアレだけど……」


 俺たちの会話に悠里が感想を述べるが、後者については同意する、前者は否定したいが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る