第百九話 和解する、気まずくなる

「なぁ……お前、グループで『今までの事は謝る』とか何とか言ってたけど、一体何の話だったんだ?」


 小松が突然俺に話しかけてきた。

 ……え?


「ウチもそれ気になってた!」


「俺も、なんだったんだあれ?」


「……」


 ……あれ?


「いや、その……」


 どうやら、こいつらはあの時の事、気にも留めてなかったらしい。


『……お前らここで死んどけ!!』


 ……なんだよ、それ。

 これじゃあまるで……俺が馬鹿みたいじゃないか。


「あ、まさかアレか?」


「あー! あれね!」


「そうか! あれね!」


「……」


 ……やっぱ覚えていたか? まぁ無理もない、あんなこと言ったらな。

 恨んでいるに……決まってるよな。


「お前、今まで既読だけ付けて、会話に参加しなかったろ?」


 ……え?


「別に気にすんなよ!」


「そうだよ! 忙しかったんならしょうがないって! ウチもそういうことあるし!」


「私も……よくやる……」


「いや、そういう……」


「いいって! 気にすんなよ! 仲間だろ?」


 仲間、か……。

 こいつらにとっては、あの時の事は記憶にも残らない、些細な事だったのだろう。


「そういうギスギスしたのは無しにしようぜ! 一緒の戦うわけだし! な? 『昇』!」


「お、いいねぇ!」


「うん!」


「……うん」


 ……俺は一体、何に悩んでいたんだろう? 今はもう、そんなことはどうだっていい。

 俺は……。


「あぁ! 『翔琉』! 『愁』! 『悠里』! 『薫』!」


「よっしゃ! これでチャラになったな!」


「あの……私も……名前呼びして……いいですか?」


「もちろん! 『薫』!」


「ありがとう……『翔琉』さん……」


「じゃあ俺も!」


「ウチも!」


「あ……え……じゃあ……『愁』さん……『悠里さん』……」


「うん! 『薫』ちゃん!」


「『薫』ちゃん! 頑張ろうね!」


 今ここに、真の仲間ができた……ような気がした。


「ところで! 昇くん!」


「は、はい!?」


 悠里が突然俺に話しかけてきて、ビビッてしまった。


「シェダルちゃんとはどこで知り合ったの? どうやってここまで発展したの!?」


「こ、ここまで?」


「確かに俺も気になる、同棲までしてるなんて相当仲がいいよな」


 そういえば、付き合っている設定をこいつらにも適応していたのを忘れていた!

 最初の方にも思っていたが、やっぱり同じ屋根の下なんておかしいよな!? 叔父さんやっぱおかしいよな!?

 ここは改めて否定しよう。


「いや違うんだ、俺とシェダルは別にそういう関係じゃ……」


「またまたぁ、照れちゃって! で、どこで知り合ったの?」


「……」


 ダメだ、こいつ叔父さんと同じで話を聞かねぇ。

 知り合った場所も、お前らを見捨てたダンジョンの中ですなんて言えない。


「おい悠里! 昇が困ってるだろ!」


「えーいいじゃーん、ねぇー翔琉! ウチらもそろそろ同棲しよ!」


「ば、馬鹿! まだ俺らは未成年……」


「昇くんがしてるなら、ウチらも大丈夫でしょ?」


「いや、確かにそうだけど……」


 2人がイチャイチャし始めた。


「そういえば……ごめんね、薫ちゃん、足手纏いになっちゃって」


「愁さん……私は……気にしてないです……愁さん……かっこよかったです」


「そ、そう? なんか照れるな……」


 愁と薫も会話をはじめ、盛り上がっているようだ。

 俺……孤立? マジ? まぁ人数的にそうなるけどさ……

 俺は早くこの空間から抜け出したいと思いつつ、シェダルを待った。

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