第百四話 回復スキル! 痛すぎる!

「シェダルちゃん!? どうやって捕縛から抜けたの!?」


 羽田が突っ込んだ。

 確かに、この蜘蛛野郎は未だにピクリとも動かない。

 これはもしかして……。


「これのおかげだ!」


「な、なにそれ?」


 シェダルがケースから鍵を出し、それに対し、三沢が困惑の声を上げた。

 俺はそれが何の鍵かわかっていた。


「……テイマースキル」


「その通りだ!」



 シェダルは「ご名答!」と言っているように、俺に向かって予指を差した。


「この鍵を使用すると、鞭を当てたモンスターを一定時間、思い通りに動かせる! そのモンスターの攻撃が通常よりも強くなるおまけ付きだ! デビルスパイダーの場合は糸が硬くなったり、体が硬くなるわけだな!」


 ……なるほど。


「しかもこれは鍵を外しても有効だ! すごいだろう?」


 なるほど、だからあの時鍵を外しても、牛さんは俺を襲わなかったのか。


「で、あるからにして、おーい! 蜘蛛ちゃん! ダンジョンの奥へお帰り!」


 デビルスパイダーは、シェダルの指示を聞くと、ダンジョンの奥へと去っていった……。

 ……と、俺も。


「牛さん! おいで!」


 俺の声に反応し、牛さんが俺の前に立った。


「うわなに!? キモ!」


 羽田は牛さんに対して辛辣な言葉を言い放った、酷くないか?

 まぁでも、こいつらから見たらモンスターだしな……。


「牛さん、ここまでありがとう、ダンジョンの奥でひっそり暮らせよ……あの蜘蛛に同行してもらいな」


 牛さんは静かに頷いて、ダンジョンの奥へと消えていった。

 ……ありがとう、牛さん、また会ったら敵になるかもしれないが、君の事は忘れない。


「おおっと、お前らの傷も癒さないとな」


 シェダルはケースから持ち手に十字が描かれている鍵を取り出して、腕輪に刺した。


『回復スキル!』


 か、回復スキル!? そんなスキルあるんだ……。


「スキルチェンジ」


『スキル解放! 癒しすぎる! 回復スキル!』


 シェダルは銀色のナース服に身を包み、片手に巨大な注射器を持つ姿になった。


「ほーれ、回復っと」


 シェダルが注射器を押すと、謎の液体が飛び出し、俺たちの傷が癒されていくのがわかった……が。


「いってえええええええ!」


 ……めちゃくちゃ痛かった。

 例えるなら痛い注射を体の隅々までされているような感じだ。

 

「痛い! これ痛いよ!」


「いたたたたた! シェダルちゃん! もっと優しく!」


「痛い! マジ痛い!」


「……痛い」


 みんなも痛いのか、各々反応を示す。

 うん、これはマジで痛い。


「我が儘言うな! 傷は癒されているだろう!」


 シェダルは俺たちに向かってそう叫んだ。

 確かに回復しているけど、代償がデカすぎる!

 一通り傷が治り、痛みを耐えていると、シェダルは元のワンピース姿に戻っていた。

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