第六十一話 轢いたモンスター、君が倒した

 気が付いたら、あっという間に、第四階層の手前まで着いていた。

 そして、その間何があったかといえば、最初と同じで、モンスターを轢いて、生きてた奴は追撃して、死体を回収して、またモンスターを轢いて……

 目が回りそうだった、ていうか転移スキル以上に酔うわこれ……


「ふぅ~、あっという間だったな! 全く、馬鹿みたいに長いな!」


 馬鹿はお前だ、そう言いたかったが、そんな気力すら無かった。

 結局俺は、その大部分をシェダルの手のひらで踊らされているかの如く、利用されてしまった。

 シェダルは俺から降車して、首元の鍵を外した。

 すると、俺の体が光を放ち、目が覚めると、ダンジョンの壁の端っこで横たわっていた。

 やばい……吐きそう……


「昇、よく頑張ったな、えらいぞ」


「……」


 シェダルは頭を撫でてそう言った。

 飴と鞭というやつだろうか? それにしては鞭が強すぎる気がする。


「立てるか?」


「あ、あぁ……」


 シェダルは俺の肩を支え、立ち上がらせた。

 ……そして例によって、シェダルは体を寄せてきて……抱き着いた。


「だから……抱き着くなって……」


「嬉しいくせに」


「……」


 なーにが体温を感じれば落ち着くだ。

 ……まぁ、今の俺には必要だったが。


「全く……俺をいいように使いやがって、これでチャラになると思うなよ」


「おや? これはお前のためにやったことだが?」


「はぁ?」


俺のため? 何言ってんだ?


「まぁまぁ、ステータスを開いてみろ」


「あ、あぁ……」


 シェダルは体を放した

 俺は言われた通り、スマホを出した。


「ステータスオープン」


------


金剛 昇


NOBORU KONGO




国籍 日本国


スキル 鍵


レベル35




在籍 県立祇園高等学校


------


 うお!? めっちゃ上がってる!?


「ははは! バイクスキルで倒した敵は即ち、お前が倒した敵だ!」


「お、おう……」


 つまり、バイクでモンスターを轢いた分、俺が倒したことになるわけか。

 そして、その上に、シェダルの言う「バイクマン」状態の時に倒したマッコーシュの分が追加されたわけか。

 楽だが……ちょっとなぁ


「このレベルなら、この階層の敵も余裕で倒せると思わないか? 腕輪の力なら、この程度のレベルでも余裕だ!」


「……なぁシェダル、このスキルで敵を倒すのやめないか? なんか実感が湧かないっていうか……」


「そうか? まぁ確かに、お前のためにならないか! 自分で『私がいない時はどうするつもりだ!?』と言っていたのに、申し訳ない! 気絶するほど頑張っているお前を見ていたら、どうしても応援したくなってしまってな!」


「……」


 先ほどの鞭が強すぎるという言葉は撤回する。

 ここに来て、砂糖よりも甘い飴が来た。


 すると突然、シェダルの後ろからモンスターが出てきた!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る