第五十五話 バイクスキル、俺はバイク!?


 外に出ると、既にシェダルが鍵スキルの姿になっていた。

 銀色のコートが眩しく光っている。


「さて、こいつを」


 シェダルは先ほどの持ち手が円状の何かの形になっている鍵を渡した。


「なぁ、この鍵なんなんだ?」


「論より証拠だ、お前が使ってみろ」


「こんな得体のしれない物使えるかよ」


「既に得体のしれない代物でモンスターと戦っているだろう?」


「……」


 ……確かにそうだ。

 仕方がない、やってみるか。

 持ち手をよく見ると、車輪のように見えた。

 ライダースキル……とか? 確か少数ながら持っている人がいるというのは聞いている。

 モータースポーツ関連の人とかだっけ? それならいいが、肝心の乗り物が無い。


「さぁ、早く嵌めないか!」


「わかったよ! 急かすな!」


 俺は腕輪に鍵を嵌めた。


『バイクスキル!』


 ……ん? バイクスキル?


「なぁ、そんなスキル聞いたことが無いんだが?」


 バイクって……あのバイクでいいんだよな? ユニークスキルだろうか?

 持ってる人どのくらいいるんだ?

 俺はロック調の待機音をバックにそう考えた。


「早く回さないか!」


「お、おい!」


 シェダルは俺の腕を掴んで、鍵を強制的に回した。


『スキル解放! 走りた過ぎる! バイクスキル!』


「は、走りた過ぎる……!? というか俺どうなって……」


 音声と同時に、俺の体が小さく丸まっているように感じた。

 なんだ!? ていうか……立ってられない!?


「少しくすぐったいかもしれないが我慢しろよ!」


「お、おい! 一体何が……」


 俺の体が光に包まれ……一時的に気を失った。



 ……気が付くと、目の前には……さっきまでいた花畑か。


 ……ん? 体が自由に動かないぞ? なんか立っているというより、ファラオ像みたいな体制になっている。

 それに手足が何か変だ、手のひら、足の裏の感触が無く、代わりに違う何かに変わっているように感じる。

 丸い何かのような……


 腕輪は首の方に移動した感覚になった。

 ……この場合、首輪?

 というか、顔も自由に動かない、俺はどうなって……


「おお! 上手くいったな! いやはや我ながら美しい『体』だな!」


 シェダルが目の前に現れ、俺の頭を撫でた……

 えぇ!? どういうことだ!? 抵抗しようにも動けない。


『おい! 俺今どうなってるんだ……って俺、口じゃないところから言葉が出てないか!?』


 まるで、AIのような、天の声のような、そんな感じで言葉を発する俺。

 洋画やアニメで、口が無いキャラクターが言葉を発するときがあるが、もしかして、こんな感じなのだろうか? そんな感覚がある。

 シェダルは俺の疑問に対してこう答えた。

 ……その答えに俺は驚愕した。


「あぁ、今のお前はバイクになっている」


『は?』

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