第五十四話 電話をする、手前まで行く
「よく寝た……」
体をよく伸ばし、俺は起き上がった。
シェダルは既に起きたようだった……ふと横を見ると、シェダルが何かを弄っていた。
「おう、おはよう、昇」
「あぁ……おはよう。何してんの?」
「あぁ、大したことじゃない気にするな」
「……?」
寝起きで頭が回らないせいなのかもしれないが、特に追及するのはやめた。
何か道具を作っていたかのように見えたけど……シェダルはすぐさま収納スキルに変身し、弄っていたものをしまった。
……まぁいいか、早く起きよう。
「さて、第三階層に行くか?」
収納スキルを解除し、シェダルは起き上がった俺に話しかけてきた。
「言いそびれたが、そこは多分入れないだろ」
「そうなのか?」
俺は詳細を話した。
第三階層以降はそれまでとは比べ物にならないモンスターが大勢いることから、許可を受けた冒険者か自衛隊しか入ってはいけないことを。
その話をすると、シェダルは再び爆笑した。
「はははは! お前と私なら、そこにいるモンスターなんて余裕だろうに!」
「そういう問題じゃねぇよ! 無許可で入ったら最悪の場合……」
逮捕されるぞ!
そう言おうとしたが、シェダルはその言葉を言う前に、自らの手で俺の口を抑えた。
そして、耳打ちでこう言った
「大丈夫だって……バレなきゃどうとでもなる……それに私の戦闘力、見ただろ? 私は既に最下層手前まで行ったことがあるんだ、これでも大丈夫じゃないと言えるか?」
まるで違法な物を売買する人間のように、悪魔のささやきを始めた。
俺は悪魔を突き放した。
「あのなぁ! そもそも行けないんだよ! 許可証に反応する門が確かあるんだよ!」
これも座学で学んだことだ。
許可を貰うと、政府から冒険者ギルドを経由して、許可証が暗号付きで携帯電話に送られる。
もはや携帯電話と一心同体になっている我々にとっては画期的なもので、門の前で許可証をかざすと開くようになる、らしい。
「ほう、そうか、なら仕方がないな!」
「おう……」
やけに素直だな。
「んじゃ! 手前まで行ってみよう! それならいいだろう?」
「あ、あぁ……」
「そうと決まれば早く行こう!」
「おいまた転移スキル使う気じゃ……」
「大丈夫だ! こいつを使う!」
シェダルはケースから一本の鍵を出した。
持ち手には、円状の何かが描かれていた。
「それは?」
「まぁまぁ、嵌めて見れば分かる、その前に外へ行こう」
「あ、あぁ……」
一体何なんだろう?
まぁ俺は転移スキルで酔わずに済むならそれでいいのだが……
「あ、ちょっと待って!」
「どうした?」
「そういえば、叔父さんに連絡しないと……遅くなるだろうし」
「あぁ、そうだな、卓郎さんに連絡しないと心配するからな! 私は先に外にいるぞ!」
「おう」
シェダルは足早に外に出て行った。
電話帳から叔父さんの番号を呼び出し、電話を掛けた。
しばらくすると、叔父さんが出た
『もしもし? 昇くん?』
「あ、叔父さん? 今大丈夫?」
『あぁ、今仕事が終わったところだよ、それで? 今日はシェダルちゃんと一夜過ごしたいから電話してきたのかな?』
「ちげぇよ! ちょっと遅くなるから、電話しただけだよ!」
『そうかいそうかい、あ、叔父さんこの後また仕事だから! それじゃ、デート楽しんで! シェダルちゃんには優しくするんだよ!』
「あ、ちょっと! 叔父さん! ……切れたし」
全く……付き合ってる設定とはいえ、こういうのやめてくれないかな……
『叔父さん……心配になったんだよ! 本当に大丈夫なのかい!?』
……あれでも、一応俺のためを思っているのかな。
電源を切ろうとした時、メッセージの通知が来ていた。
『@金剛 昇 今日はありがとうな! 俺たちはもう解散したよ! 授業の時はよろしく!』
またも小松だった。
……俺の事、嫌な奴だと思って気を使っているのかな?
俺はそんなことを考えながら、神殿の外に出た
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます