第二十五話 明らかすぎる、短すぎる


 意味が分からなかった。

 何故あいつらは俺のことを庇ったのか? 俺なんかほっておいて、自分たちの保身に走ればよかったのに。

 ……しかし奴らは、俺の味方をした……何故だ?


 疑問が疑問を呼ぶ中、俺は学校を出た。


 学校を出る前に職員室に連行され、教師に事情聴取されたが「走った先に偶然別の出口を見つけて、そこから脱出した、その後バスに乗ろうとしたがすでに発車していて、混乱してしまい、電車で学校まで来た」という風に説明した。

 少々無理があったが、教師は納得した。


 まぁそんなこんなで、校門を出よう、シェダル戻ってくるとか言ってたけど、もういるのかな?


「ねぇねぇ、君この辺の人?」


「外国の人だよね? この辺夜は危ないよ」


「俺たちが帰るところまでついて行ってあげるからさ、行こうよ」


 おっと、これはまずい。

 先ほどまで、俺を罵っていた男衆が、使い古された謳い文句でシェダルをナンパしていた……このまま声をかけると完全にアンフェアだ。

 一旦スルーしよう、そう思った時だった。


「あ、昇!」


「げっ!?」


俺は思わず口を抑えた。


「え!? 金剛!?」


 男は驚愕の声を上げた。

 なんでこの状況で俺に声を掛けた!? アホか!?

 つーかよく考えたらなんで校門の前で待ってるんだ!? お前完全に怪しいだろ! よく守衛さんに声かけられなかったな!


「待ってたぞ! 昇! さぁ行こう!」


「お、おい……」


 シェダルは男衆を払いのけて、俺の腕をがっしりと掴んだ。

 すごい近い! そしていい匂いが……ってそんな場合じゃない!


「お、おい! 待てよ! 金剛! テメェその子とどういう……」


男が俺を指さして何かを言っている。

俺が言い訳をしようとしたその時、シェダルが口を開いた。


「今日は『付き合って5日の記念日』だろう? さぁデートだデート!」


「はぁ!?」


 付き合って5日!? こいつなにほざいてるんだ!?

 というか5日の記念日ってなんだよ!? 明らかに短いだろうが!!

 そんなツッコミをしたくなったが、シェダルは腕をつかんだ手を放さずに、そそくさと歩き始めたため、俺もその歩幅に合わせなければならなくなった。

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