第二十六話 押しかける、頼みがある
「お、おい! 付き合って5日ってなんだよ! せめて記念日なら1年とか短くても1か月とか……」
「そこまで考えが回らなかった、だがこうして切り抜けられたろう?」
「それはそうだが……」
なんていうか、俺も男だし、シェダルの見た目は綺麗だし可愛いし……性格はちょっとアレなところはあるけど……付き合ってる設定はさすがに恥ずかしいというか……嬉しい気持ちもあるにはあるけど……ちょっと考えるのやめよう、うん。
「それより地上の拠点が必要だ、お前の家まで案内しろ」
「はぁ!? 勝手に人ん家を拠点にすんなよ! というかそもそも、叔父さんの家だから叔父さんに許可を……」
「家族については既に言い訳を考えてある、安心しろ」
「またろくでもない事じゃねぇだろうな?」
「安心しろ! これは確実だ!」
「そうかよ……ていうかいつまで腕掴んでるんだ?」
「道に迷わないようにだ、それにこれからやる……ん? 何故止まった?」
「着いたからだよ!」
『金剛鍵屋』、現在俺の住んでいる叔父さんの家
「鍵屋か! 鍵スキルなのも縁じゃないか?」
「というかお前、日本語話せるだけじゃなくて、読み書きもできるのか?」
「だから言ったろ? 私は天才だからな、まぁ勉強しなくても翻訳スキルがあれば大丈夫なんだが、それじゃあつまらないだろ?」
「……」
謎に説得力がある。
このまま「言い訳」とやらも説得力のあるものだとありがたいんだがな……
そんなこと考えつつ、鍵屋の扉を開けた。
「ただいま……」
「おー! おかえり! 叔父さん、凄い心配したんだよ昇くん! ダンジョンで行方不明って聞いて……この子は?」
入るや否や、叔父さんは俺を出迎える。
そして、俺の腕をつかむ、白銀の髪の少女について聞いてきた。
「あぁええっと、この子は……」
俺はシェダルについて紹介しようとした、その時。
奴が提案した「言い訳」とやらが飛んできた……
「初めまして! 昇のガールフレンドのシェダルです! 付き合って5日経ちました!」
「なっ!?」
「えぇ!? が、ガールフレンドォ!? 付き合ってる!? 昇くんどういうことだい!?」
叔父さんが驚愕の声を上げる、当たり前である……なんで付き合って5日設定引っ張ってるんだこいつ! せめてその設定使い回すなら日数引き延ばせやバカタレが!!
「ちょ、ちょっと昇くん! こっち来て!」
叔父さんが手招きをする。
シェダルは腕から手を放し、首で合図をした、「早く行け」と言うように。
叔父さんは俺が近づくと、俺の肩を掴んで、シェダルに背を向けた状態で、小声で話しかけてきた。
普通に考えて、付き合って5日の女を家に連れてくるなんて、アグレッシブすぎるだろと考え、別の言い訳を考えていたが、叔父さんの口から出た言葉はというと……
「ねぇねぇ昇くん、いつの間にあんなかわいい子を彼女にしたの?」
「いや違うんだよ叔父さん、あの子はね……」
「いやいや、緊張しなくていいんだよ昇くん、叔父さん全力で応援するからね! で、何でここに連れてきたの? 自慢しに? あ、わかった! 今日お泊りしに来た? ちょうど部屋余ってるから泊めることはできるけど、変なことしないでね! そういうのは叔父さんがいないところで……」
「……」
この野郎……俺の言い分に全く聞く耳を持たねぇ……
困惑する俺に、後ろから声が聞こえる。
「ねぇ昇! 叔父様に頼みがあるんじゃなかった!?」
シェダルが大声でそう言った。
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