第二話 鍵屋さん、叔父さん
席を立って後にしようとしたその時だった
「おい、金剛! どこに行くんだよ!」
御曹司様が俺をお引き留めになられたようだ。
「なんだよ?」
俺は後ろを振り向き、御曹司様に返事をする。
体は出口の方角に向いていた。
「お前もパーティメンバーなんだから、これからやる作戦会議に参加しろよ! 仲間だろ?」
「たかが授業に何必死になってんだよ、それに俺はお前らよりもレベルが圧倒的に低いしスキルもお察しだろ? 俺がいようがいまいが関係ない」
陽キャトリオと陰キャちゃんは俺を見つめている。
事実を言ったまでなのになんだこの視線は。
「金剛くん、気持ちは分かるけどさ、これは集団行動の模擬みたいなもんでしょ?」
「悠里の言う通りだぜ、スキルとかレベルとか関係ないだろ?」
御曹司の正妻と家臣様も同調しだした、静観している陰キャちゃんは周りをキョロキョロとしていた。
「お前はもう俺らの仲間なんだから、一緒に頑張ろう! な?」
「そうですか、分かりましたよ!」
仕方がない、俺は席に着いた
こいつらはレベルやスキルなんて関係ないみたいな口ぶりをしているが、陰では他の連中のように馬鹿にしているに違いない。
何故俺が鍵スキルで他の奴らは普通かユニークなスキルなのだろうか?
誰がスキル社会なんて欠陥社会を提案したんだろうか?
何故誰も俺のような欠陥スキル持ちに救いの手を差し伸べないのだろうか?
御曹司様と仲間達が作戦会議をしている間、俺はそんなことを考えていた。
気が付くと昼休みの終わりの合図が鳴り響き、俺含む生徒と教師は次の授業の準備を始めた。
◇
授業も終わり、俺はさっさと帰宅の準備をした。
帰り際にスマホを見ると『ダンジョン探索頑張ろうぜ!』という小松の文章と、それに同調するコメントが二つとスタンプが一つ貼られていた。
俺は既読だけ付けて電源を切った。
なんやかんや歩いていると、一昔前の雨除けがトレードマークの、年季が入った木彫りの看板に「
一応、ここが今の帰る場所だ。
「ただいま」
「あーおかえり! 学校楽しかった?」
「……」
この妙にテンションの高い男性は、俺の叔父、「
鍵屋という名前の通りで、それ関連の仕事をしている。
俺が鍵スキルのも何かの縁だろう、嬉しくはないが。
「んまぁ普通だったんだね! ところでダンジョン探索が必修なんだよね? 叔父さん奮発して昇くんのためにこれを買ったんだ!」
叔父さんはそう言って、俺の身長の半分はある剣を出した。
「いや叔父さん……俺のスキル知ってるだろ? 剣なんて振り回す柄じゃないって……」
「スキルなんて関係ないよ! 叔父さん心配でさぁ、昇くんに何かあったら大変だから武器は持たせておこうと思って……」
「持ったところでしょうがないだろ? 俺が持っても宝の持ち腐れだよ」
叔父さんの心配性がここまでとは、予測はしていたけれども。
この間なんか、ちょっと擦り傷を負っただけで大騒ぎしてた、そんな過剰になるか?
「そうかなぁ……」
叔父さんは肩をすくめて下を向いた。
全く……
「わかったよ、せっかく買ってくれたし大事に使うよ! ありがとね」
俺は剣を受け取った。
さっさと部屋に戻ろう。
「あ、昇くん! 今日の夕飯ハヤシライスだからね!」
そんな叔父さんの言葉を尻目に、階段を上がった。
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