第三話 悪夢、取り巻く
部屋に入り、俺はベッドに横たわり、剣を見た。
叔父さんが買ってきた剣か……実物の剣を見たのはあまりないが、奮発して買ったのはわかった。
『これは集団行動の模擬みたいなもんでしょ?』
『スキルとかレベルとか関係ないだろ?』
『一緒に頑張ろう! な?』
あんな綺麗事ばかりぬかす奴らと一緒とはな。
……仲間、か
果たして俺は役に立つであろうか?
色々考え事をしていると、意識が薄れていき、周りが真っ暗になった。
◇
真っ暗な洞窟、俺は走っていた、暗闇を。
何故走っているのだろうか? だが走らなければならない気がした。
ようやっと人影が見えた、いったい誰だ?
近づくと姿が明らかになった。
小松に羽田、三沢に岩国だ。
なぜこいつらが? でも今はそんなことどうでもいい、とにかくこの暗闇から抜け出すにはこいつらが必要だ、俺一人ではなにもできない。
ようやっと見つけた! どこにいたんだ? ……そう言おうとした時だった
「やっぱ鍵スキルは使えねぇな!」
小松が言った。
「レベル1は足手纏いなんだよ!」
三沢が言った。
「クソの役にも立たないわね!」
羽田が言った。
「使えない人……」
岩国が言った。
鍵スキル、レベル1、役に立たない、使えない。
俺のコンプレックスを直球に言った4人は、奥へ奥へと進んでいった。
何故この状況でこんなことが言えるのか意味が分からなかった、暗闇から抜け出さないといけないのに。
俺は必死に追いかけた。
何でもいい、助けてほしかった。
鍵スキルでレベル1で役立たずで使えない俺を。
「待ってくれ! 置いていかないで!」
俺は必死に叫んだ、足が壊れるくらい走った、周りが見えなくなるくらい追いかけた。
だが奴らは待ってくれなかった。
……俺は確信した、結局奴らも他の連中と同じで、俺のことを下に見ていたんだ、なら最初からそう言って欲しかった、俺を拒絶して孤立させればよかったのに。
俺の叫びに聞く耳を持たずに奥へ進んだ偽善者達は、暗闇へ消えた。
すると暗闇で何かに躓いた、小石なのか段差なのかはわからなかった。
起き上がろうと上を向いた、早く追いかけないと、と思った。
見上げると、この世のものとは思えない化け物が俺に牙をむいていた。
嫌だ……死にたくない!
「助けてくれ! 誰でもいい! 何でもする! 死んでくれというなら死んでやる! だから今は助けてくれ!」
その叫びが暗闇の中に響き、俺は意識を失った。
◇
「昇くん! 昇くん!」
扉のノック音と、叔父さんの声で目が覚めた。
「昇くん、大丈夫?」
叔父さんはゆっくりドアを開けて俺を見つめた。
「なんだ、夢か……」
「夢?」
「なんでもないよ、叔父さん」
なんて夢だ、だが現実にも起こりそうな……そんな予感がした。
「そう? ならいいけど……ハヤシライスできてるよ」
「ハヤシライス?」
「夕飯だよ夕飯! 起きたばっかりだから後にするかい?」
「……今行くよ」
「そうかい? じゃあ、準備しておくからね」
叔父さんはドアを閉めた、階段を駆け下りる音が響く。
どうやら疲れているようだ、飯食って風呂入って早めに寝よう。
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