第一話 パーティ、辛い
高校生活……正直言うと、まったく楽しくない、特に面白くないのは、「ダンジョン探索」という名の授業だ。
そう、今年から「ダンジョン探索」という授業が必修になった、最初期の授業はダンジョンについての勉強だった。
ダンジョンは複数の階層が地下深くまで続いているらしい、普段からゲームをやっている奴らは常にワクワクしながら授業を受けていた。
世界中に出現しているダンジョンだが、共通しているのが、第三階層まではあまり強いモンスターはいない。
日本の場合、第三階層以降は自衛隊又は許可を受けた「冒険者」でないと行ってはいけない。
じゃあなんで第二階層までは大丈夫なのかというと、武器を装備していれば何とか対処できる相手だからという理由だった、他にも理由はあるみたいだが……
冒険者……ダンジョン攻略のための集団だ、ウトピアは日本に軍事協力した際に「自衛隊だけではなく、一般人の協力が無ければいけない」と提言し、反対意見を押しのけて、既存の「猟友会」を「冒険者ギルド」に改名させ、武器の保有が許可され、狩猟免許を待たずとも、簡単に入会できるようになった、他にも後進育成のために、スキル保有者向けに魔法教室や剣術教室を開いて子どもたちに教えたりしているらしい。
一通りダンジョンの勉強を終えた後に、ダンジョン探索のための班決めが行われることになった。
スキルで優劣が決まってしまうため、教師が話し合って調整された班を決められた、正直これには助かった、「はい班決めしてー」などと言われたら、俺は間違いなく孤立する。
クラスの奴らは俺を見るや否や、小声で「アイツが入ったら嫌だな……」みたいなことを言っていた、毎度毎度、なんなんだ。
そんで、班メンバーはというと、これが俺の苦手な奴らがほとんどだった、まずはクラスの所謂カーストトップである「
班リーダーになった小松は昼休みに集合を掛けて、早速、「みんな頑張っていこうぜ!」と、ありきたりな少年漫画みたいなセリフを吐きやがった。
羽田と三沢も同調し、岩国は小さく頷いた。
小松の行動を見て、他の連中も作戦会議のようなものを始めた。
それまでやる気を微塵も出さなかったくせに、小松がやる気出すとこれかよ、分かりやすい奴ら。
小松はスマホを出して、「パーティを組もう!」と言った。
スキル社会の導入により、全国民に携帯電話の所有とステータスアプリの導入が義務付けられた。
「パーティを組む」というのは、ステータスアプリの機能の一つで、一昔前のトークアプリでグループチャットを組むような感覚だ、班で組むように教師から言われたので渋々俺もスマホを出す。
「「「ステータスオープン!!」」」
陽キャトリオが携帯に向かってそう叫んだ
「ステータス……オープン……」
「はぁ……ステータスオープン」
岩国と俺は、小声でそう言った、全く何がステータスオープンだ、アプリを開くには防犯のために声紋認証でないといけない、風邪をひいて声が出ない時は顔認証という手段もある、どちらかに統一しろと言いたい。
奇怪な呪文を唱えると、お互いのプロフィール……もといステータスが画面に表示された、例えば俺のステータスは。
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金剛 昇
NOBORU KONGO
国籍 日本国
スキル 鍵
レベル1
在籍 県立祇園高等学校
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となる
パーティを組み、他の奴らのプロフィールも表示された
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小松 翔琉
KAKERU KOMATSU
国籍 日本国
スキル 剣
レベル55
在籍 県立祇園高等学校
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羽田 悠里
YOURI HANEDA
国籍 日本国
スキル 弓
レベル42
在籍 県立祇園高等学校
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三沢 愁
SHU MISAWA
国籍 日本国
スキル 鎚
レベル40
在籍 県立祇園高等学校
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岩国 薫
KAORU IWAKUNI
国籍 日本国
スキル 魔法
レベル50
在籍 県立祇園高等学校
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剣、鎚、弓等のスキルはよく見られる、何故戦闘系スキルである筈のそれらがよく見られるかは不明だが、一般的な庶民の定義であろう、多分。
それ故に経済を回している多くの会社員もこのスキルを持っていることが多いようだ、有事の際にもこのスキルを使って歩兵としてこき使えるので国としては万々歳だろう。
しかし企業的には、「対話スキル」「統率スキル」などのスキルを持つ者を欲しがる傾向が多いようだ、俺も企業の社長の立場だったら同じことを思うであろう、あくまでも素人視点での話だが。
「うお! 翔琉またレベル上がってるじゃん!」
「親父の仕事を手伝ってるからな」
「うそぉー? ウチもママの手伝いしてるのにぃー?」
「やっぱ大企業の御曹司は違うよなー、善行の幅が違うし、世の中の役にも立ってるから上乗せもされるし」
「でも正直、父さんのことはあんま好きじゃないんだよね、この前だってさ……」
陽キャトリオがくだらない会話をしていた。
小松は「小松工務店」という大手ゼネコンの社長の息子らしい。
「工務店」という屋号だから小さい建設会社だろ、と最初は思っていたが、江戸末期にできた企業で、都心のビル群やデカいスタジアムも奴の会社が建てた他、リフォームや不動産販売も行っているらしい、そんでもって奴の父親は6代目だか7代目くらいのようだ、どうでもいいが。
あと、ゼネコンの御曹司なら普通「建設スキル」だろ、といつも思う。
「というか、岩国さんのレベルすご!」
羽田が岩国に近づいてそう言う。
「私……魔法……学んで……色々……善行……積んでる……」
「魔法スキルって強いもんなー、善行積むのも楽そうで」
「おい愁! 岩国さんに失礼だろ! つーかお前は怠けすぎだ!」
「そうだよ! 翔琉や岩国さんみたいにアンタも努力しなさい!
「はーい……」
はぁ……もうなんか、この場にいるのが辛いわ
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