第9話 再会〜これからやり直せるから〜

 高校生活は本当にあっという間だ。

 はるちゃんを見送ったあの日と同じように私はピアノのに向かう。

 今日は私たちの卒業式。

 先生にやりたいとお願いをした伴奏…




 それは保護者席にいる『』に向けて⎯⎯⎯⎯⎯⎯






 卒業式の少し前。

 私宛に届いた手紙の差し出し人を見て驚いた。


「お父さん…」


 私が手紙を出した日から2年…


『卒業式に行きたい』


 お父さんからの手紙にはその一言と連絡先だけが書かれていた。


 


『はい、櫻です』


 電話から聞こえる声は聞き覚えのある懐かしい声…


「お、お父さん?」


「…菜穂か?ごめん…ごめんな」


 お父さんは聞いていられないような苦しそうな声で謝る。


「お父さん!もういいよ、なにも言わなくていいよ。

 来てね…卒業式の日、待ってるから!」


『ありがとう』


 泣いているような震えた声でお父さんはそう言った。







 今日の伴奏はいつもより緊張してしまう…

 名前を呼ばれ舞台に上がる。


 信じてよかった…

 こうして伝えられる日はいつか来る…



 お母さんが出て行った日から12年間、今までの記憶が蘇り涙が溢れそうになる。


『音楽で気持ちが伝わる』


 そう…今の気持ちをピアノに乗せて⎯⎯⎯⎯⎯




「終わった…」


 歌が終わりピアノの音が残る。

 家族席を見るとお父さんは涙を流しながら私をじっと見つめていた。



 私の気持ちが届いた。

 これでいい…時間がかかったけどこれからやり直せるから⎯⎯⎯⎯⎯

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