第5話 危険!近寄るな


「水戸旭」



いつもの河原の帰り道。

はるちゃんが言った名前に私は立ち止まる。

なんで…

私が黙っているとはるちゃんは私の方を向き


『あいつだけには関わるな。』


そう言うとまた歩き出した。





次の日、昨日はるちゃんに言われたことを美咲に話すと、少し嫌な顔をしながら顔を抑える。


「あ〜やっぱりか〜」


美咲は『』のことは前々から知っていたらしい。


「ファンクラブ?」


美咲がいうには女子からは王子様と言われているとか。

これまでクラスの誰とも関わらなかった私は水戸くんが人気者なことなんて…


「知らなかった…」



そんな人がどうして私なんかを⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯







あれから数日後。



お昼休み、売店から教室に向かっていると先輩3人に下駄箱前で呼び止められた。




「ねぇ、聞いてるんですけどー?」

「旭くんに近づかないでくれるかな?」


「近づいてません…」


「はぁ?何言ってるわけ?

旭くんがあんたみたいな地味女に話しかけるわけないじゃん。

あんたがちょっかい出してんでしょうが!!」



そう言い手を振り上げた先輩。

うっ殴られるっ…


パシッ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯


「おっと先輩。俺のお気に入りになにするんの?」


聞き覚えのある声…

瞑っていた目を少し開けるとそこには⎯⎯⎯⎯



「水戸…くん…」


こちらを向きにっこり笑うと私の前に立ち先輩を睨みつける。


「ちょっかい出してるのは俺だよ?

君たちみたいな子ウザいんだよね。

ファンクラブなんて勝手なことしないでくれる?

次、菜穂になにかあったら先輩でも許さない」


「なんでその子なの!」


私を睨みつけながら先輩が叫んだ。

水戸くんは先輩たちの方へ近づき、耳元でなにかを呟くと先輩たちは悔しそうな顔をしてその場を去っていった。




「あの…は、離してください」


先輩が去った後、水戸くんは私を抱きしめた。

離れる様子のない水戸くんはさらに力を強める。


「なんでここに?」


「ごめんな…。怖い思いさせてごめん。

先輩が呼び出してるって聞いて急いで探してた」



私を探していた?

助けようとしていた?

守ろうと…

なんで…


そう言い水戸くんが離れ私の肩に手を乗せ俯く。

震える声で『ごめん』と呟いた。




「菜穂っ!!だいじょ…てめぇ!!!」


勢い良くはるちゃんが水戸くんの胸ぐらを掴んだ。


「お前、なにがしたい!お前のせいだぞ!!

遊び相手なら菜穂じゃなく他の女にしろ!」


「待って、はるちゃん!水戸くんは助けに…」



今のはるちゃんには私の声は届かない。

その時水戸くんが口を開く。


「遊びじゃありません!俺が守ります」



「王子様の言うことなんか信用できるかよ!

次、なにかあったら容赦しねーからな!!行くぞ、菜穂」



助けてくれた水戸くんにお礼も出来ず、

はるちゃんに手を引かれその場を後にした⎯⎯⎯⎯⎯






はるちゃんと彼女さんの3人で一緒に並んで歩く帰り道。


「はるちゃんっ、水戸くんはね、助けに来てくれたの」


「えっ助けに?」


そう反応したのは彼女さん


「私を呼び出してるって耳にして探し回ったって、間に合わなくてごめんって…

だから、悪く言わないで」


「ねぇ、晴翔?

一回さ、水戸旭くんのこと信じてみない?

もしかしたら、菜穂ちゃんを変えてくれるかもしれないよ」


そう言った彼女さんの言葉にはるちゃんは返事をしなかった。

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